[イベントレポート]

ビジネスのイノベーションは意図的に起こすもの、SAP HANAは事業変革のプラットフォームクラウドに

SAP SAPPHIRE NOW

2013年5月16日(木)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

独SAPは2013年5月14日(現地時間)から16日にかけて、同社の年次イベント「SAPPHIRE NOW」を米フロリダ州オーランドで開催している。2日目の基調講演には、Co-CEOのジム・スナベ氏が登壇し、インメモリー処理技術のHANAをプラトホームにしたビジネス・イノベーションに乗り出すことの必要性を訴えた。

ビジネス・イノベーションを訴求するにあたり、ジム・スナベ氏が例えに挙げたのは、ダーウィンの進化論である。環境の変化に耐えるために生物が進化してきたように、ビジネスの世界でも変化が必要があると強調する。

進化論は当時のビッグデータ活用の最適例?

さらにスナベ氏は、ダーウィンが進化論にたどり着くために5年間に5000以上の標本を集めたことを紹介し、「これらの標本が、当時のビッグデータであり、ダーウィンの脳がインメモリー・テクノロジだ」と、SAPのHANAと対比してみせた。

ビジネスの進化論でいえば、現在は、農業から1860年代の工業化の時代に続き1990年代に始まった「デジタル時代にある」(スナベ氏)。そこでは、従来の資源消費型の経済ではなく、資源の消費を最小限に抑えながらも、個々人に最適化した製品・サービスの提供が重要になってくる。世の中のディジタル化によって「インディビジュアル時代、コネクテット時代が訪れた」(同)と指摘する。

コネクテット時代のアップリケーションとしてスナベ氏は、いくつかの例を挙げた。車での移動した先でのガソリンスタンドや駐車場への誘導や、地下鉄のホームの壁に商品の映像を表示しスマートフォンで注文を受け付ける小売店、体質の変化を感知しての予防医療などだ。これらのいずれにも共通するのが、ビッグデータに基づく予測に基づいて行動するビジネスモデルが適用できる点である。

「携帯電話を”支店”に見立てたオンラインバンキングを展開する南アフリカのスタンダードバンクのように、在庫を持たない小売店や、一般家庭における発電を加味したスマートグリッドなど、過去にないビジネスモデルを打ち出せる時代がきた」(スナベ氏)というわけだ。

HANAはDBエンジンからイノベーション・プラットフォームに

当然ながら、こうしたイノベーションをSAPが提供するソフトウェアなら実現できるとする。コアにあるのは、インメモリー処理技術の「SAP HANA」だが、従来とは異なるのは、HANAおよびHANA上で動作するSAP Business Suiteのいずれもが、「クラウド環境で今日、実際に利用できるサービスとして存在している」(スナベ氏)ことである。

HANAの高速処理が生きる「ビジネス・ウエアハウス(BW)」から始まったクラウド対応は、この5月頭には、Business Suiteと中堅・中小企業向けのBusiness Oneともにクラウド環境にあるHANA上でのサービスを開始。今後は、SAP製のアプリケションに続き、サードパーティ製の各種アプリケーションがクラウドのHANA上で動作するようになる。

これらのアプリケーション群がクラウド環境で利用可能にることで、企業のIT部門が受ける最大の恩恵は、「複雑化の回避」(スナベ氏)。先行ユーザーの中には、「TCO(所有総コスト)を30%削減できた例がある」(同)という。複雑化を回避できることは、「ITの最大の価値であるスピードの阻害要因を取り除くとになる」ともした。

すべてのソリューションをクラウド上で動作させる戦略の中で、SAPが注力するもう一つのクラウドが、人事管理のSuccessFactorsと購買プラットフォームのAribaに代表される「パブリッククラウド」だ。今回の基調講演でも、SuccessFactorsの導入を決めた米ペプシコやベアリングメーカーの米ティムケン、スイスのネッスルネスプレッソの幹部らが登壇し、「ITがビジネスにもたらす価値をできるだけ早くに刈り取るために、パブリッククラウドを採用した」と口をそろえた。

ビジネスの進化論では突然変異はない

SAPでは、SuccessFactorsやAribaなどのパブッリククラウドに対し、HANA上のBusiness Suiteなどのクラウドを「マネージドクラウド」と呼び、両者を連携させながら新しいビジネスモデルを実現するためのシステム環境を提供したい考えである。それにより、「飛躍的なビジネスの革新が可能なる」(スナベ氏)とした。そのために、「これまでのビジネスモデルを振り返り、テクノロジによる変革を考えてほしい」と訴えた。

そのうえスナベ氏は、「ダーウインの進化論では突然変異により生き残った種がいくつもある。ただし、ビジネスの世界における進化は、ランダムに起こるものではない。ビジネスで勝ち抜こうとするものが意図的に起こすものだ」とも指摘した。「ビジネスモデルの変革を意図するものが未来を決めていく。ただそれは、新しい環境、新しい段階への世界を導くものであり、人々の暮らしを改善していくことだ」として講演を締めくくった。(志度 昌宏)

ジム・スナベ氏
写真1 2日目の基調講演に登壇したCo-CEOのジム・スナベ氏
インメモリー処理技術のHANAをプラトホームにしたビジネス・イノベーションに乗り出すことの必要性を訴えた。
写真2 SAPのパブリッククラウドを採用したユーザー企業の幹部
写真2 SAPのパブリッククラウドを採用したユーザー企業の幹部
左から、SAPのジム・スナベCo-CEO、米ペプシコのグローバル人事オペレーションおよびシェアドサービス担当バイスプレジデントのシャクティ・ヤンハー氏、米ティムケンの組織改革担当ディレクタのロブ・アルボガスト氏、スイスのネッスルネスプレッソでCIOを務めるフィリップ・グリーンウッド氏
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