[調査・レポート]

ユーザー調査データで概観する、企業におけるタブレット活用の現状

インプレスR&D「タブレット端末利用動向調査報告書2012」より

2013年5月31日(金)IT Leaders編集部

企業ユーザーにも好評のタブレットデバイスだが、これから本格的に導入を検討する読者もいることだろう。本稿では、タブレットについて調査したユーザーレポートを取り上げ、すでにタブレットを業務に適用しているユーザーが、自社の活用状況や導入効果について、どのように評価しているのか紹介していく。

確実に浸透しているタブレットの企業利用

2012年3月初旬に米アップルが、第3世代の「iPad」(写真1)を発表した。新たに採用した「Retinaディスプレイ」は、前モデルの「iPad 2」の4倍となる2,048×1,536ピクセルの解像度で、CPUにデュアルコアのA5Xプロセッサを搭載、通信は4G LTEに対応するなどの強化が施された。基本的なデザインや機能は従来モデルを踏襲するものの、アップルはiPadを着実に進化させている。

写真1:2012年3月発表のiPad 第3世代(出典:米アップル)
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今でこそ、ハードウェアベンダー各社からタブレットが提供されているが、この新形態のクライアントデバイスを世間に広く認知させた最大の功績者は、やはりiPadである。国内でiPadの販売が開始されたのは2010年5月。発売の前から大きな話題を呼び、世間一般にタブレットが一気に認知された。それ以降、各社がアップルに追随する形でさまざまなタブレットをリリースし、この市場を形成してきた。

iPadの発売前から、iPhoneなどのスマートフォンが広く受け入れられており、3Gネットワークや無線LANといった通信技術も一般的なものになっていたため、タブレットが受け入れらる素地は整っていたと言える。それでも、iPadの登場からわずかの間に、クライアントデバイスの1形態として確固たる地位を築いたのは、驚異的な速さだ。

コンシューマーだけではなく、企業のユーザーにも、タブレットは広く受け入れられており、一部の企業ではすでに実業務で活用している。その様子は本誌2012年1月号の特集「決定版 スマートデバイスのすべて」でお伝えした通りだ。この特集のPart3(IT Leaders 2012年1月号 18〜21ページ)で紹介したように、タブレットの適用業務は、営業支援から電子マニュアル、教育/研修、デジタルサイネージに至るまで多岐に渡る。今後も当面の間、タブレットを導入する企業数は、着実に増え続けていくと思われる。

そうした動きのなかでいったん立ち止まり、これまでタブレットを導入した企業が、どのような用途で活用し、その導入効果をどのように見ているのかを探るのが、本稿の目的である。そのために、インプレスR&D発行の調査レポート「タブレット端末利用動向調査報告書2012」から、いくつかの調査を引用する。

この調査レポートは、インプレスR&Dがgooリサーチの協力を得て、全国の企業でIT導入に関与している人を対象に、タブレットの利用状況や導入意欲などについて尋ねた結果をまとめたものだ。調査期間は2011年9月16日から同年9月20日で、gooリサーチが保有するアンケートパネルから抽出した人に対してインターネットで回答を募った。なお、有効回答数は1,636件となっている。

企業における導入率は昨年比で10%強の上昇

まず、「タブレット端末の導入率」について尋ねた結果を紹介する(図1)。調査では、タブレットを「導入している」と答えた回答者は9.5%と、1割程度の企業がすでに業務で利用しているという結果になった。さらに、「トライアルで導入している」と答えた回答者が8.0%となり、これを合わせると、17.5%の企業が何らかの形でタブレットを導入していることになる。

図1:タブレット端末の導入率
図1:タブレット端末の導入率

前年の同じ調査では、タブレットを導入している企業は6.6%だったため、この1年でタブレットの導入率は10%以上も増加したことになる。この結果から、タブレットの企業利用が着実に広がっているということが、あらためて明らかになった。

また、図2は、「タブレット端末を利用する理由」についての調査結果である。ここで最も多い回答数を得たのは、「画面サイズが大きいから」という理由である(35.2%)。各種のタブレットのなかで比較的画面が大きいiPadでも画面サイズは9.7インチであり、当然ながら一般的なノートPCに比べたら小画面である。この問いに答えるに際に、タブレットとの比較対象として回答者の念頭にあったのは、スマートフォンだと考えるべきであろう。タブレットが登場する前に、スマートフォンの導入を検討したが、画面サイズの面で要件を十分に満たせなかったことから、導入をとどまったというケースが、少なからずあったのかもしれない。

図2:タブレット端末を利用する理由
図2:タブレット端末を利用する理由

導入企業の約6割が販売関連の業務に適用

それでは、今日の企業は、どういった用途にタブレットを使っているのだろうか。それを示したのが、図3である。このグラフは、「タブレットで利用しているモバイルソリューション」について尋ねた結果である。

図3:タブレットで利用しているモバイルソリューション
図3:タブレットで利用しているモバイルソリューション

この質問に対して、最も多くの回答者が「利用している」と答えたのは「販売・営業管理」である。具体的には、31.7%と約3割の回答者がこの用途にタブレットを使っていると答えた。次に、30%とごくわずかの差で、「販売支援・営業支援・商品説明」が続いている。このように、1位と2位を販売関連の用途で占めており、この2つを合わせると約6割の企業が販売関連の用途にタブレットを適用しているという結果になった。

前出の「タブレット端末を利用する理由」の調査では、最も多い回答が「画面サイズが大きいから」というものだった。「タブレットで利用しているモバイルソリューション」として販売関連の用途が多いという結果は、スマートデバイスにおける大画面ニーズの大きさを裏付けていると考えることができる。例えば、顧客に対する商品説明を行う際には、画面サイズが大きいデバイスのほうが適しているはずだ。

一方、「タブレットで利用しているモバイルソリューション」の調査結果のなかには、業種・業態に特有な用途も散見される。「店舗管理」(7.7%)、「保守、工事、配達管理」(7.3%)、「医療・福祉」(3.5%)といったものだ。「その他」(7.7%)のなかに、業種・業態に特有な用途が含まれている可能性もある。特定の業種・業態に特化しているという特徴を考えれば当然であろうが、導入数のうえでは「メール」や「グループウェア・イントラシステム・スケジュール管理」といった、どのような企業にも適用できる用途に比べれば、少ない結果になっている。

しかし、こうした業種・業態に特有の用途は、それぞれの企業のコアビジネスか、それに近い業務として、個々の企業の方向性を大きく左右する可能性がある。例えば、店舗管理であれば、全国に店舗を展開する小売業において、各店舗の売上や在庫の状況をタブレットに入力し、そこで得られた情報を中央の基幹システムに集約したうえで、全国的な販売戦略に活かすといった用途が考えられる。

現実的には、この例のように基幹システムと密接に統合する形でタブレットを活用できる段階に至るまでには、多大な試行錯誤と膨大なノウハウの蓄積が必要であろう。現時点から、こうした段階を視野に入れながらタブレットを活用して自社のコアビジネスを強化していけば、将来的に大きな強みになるはずだ。

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