[ユーザー事例]
データを“科学する”時代へ─リクルート、NTTぷらら、ロイヤリティ マーケティングの事例
2013年6月19日(水)緒方 啓吾(IT Leaders編集部)
データの高度活用目指し、三位一体のチームを結成──。データ分析を取り巻く環境の変化をいち早く察知、マーケティング担当者やIT技術者とタッグを組んで、データ分析の専門チームを設置する企業も登場している。彼らは、どんな背景からこうした取り組みをスタートしたのか。Part4では、先行するユーザー企業3社の取り組みを紹介する。
リクルートグループの情報インフラを開発、運用するリクルートテクノロジーズ。その中で、データ活用によるビジネス強化を担う「ビッグデータグループ」には、ビジネス、分析、ITの知識を兼ね備えた、データサイエンティスト約80名が集う。
メンバーの中には、学会などのデータ分析コンテストで受賞歴を持つ、高度なスキルの持ち主も10名以上在籍。ビッグデータグループのオフィスでは、数式やグラフ関数を囲んで、メンバーが賑やかに意見を交換し合う。そんな光景があちこちで見られる。
もちろん、これだけの人数を、一朝一夕に揃えられるものではない。同社は過去5〜6年間、データ分析のノウハウを持った専門家を、計画的に採用し続けており、その活動が実った格好だ。
ビッグデータグループの西郷彰シニアアナリストは、飲料メーカーのマーケティング部門や、データ分析の専門ベンチャー起業などの経歴の持ち主。2009年の入社以来、データ分析の専門チームの立ち上げを推し進めてきた。
「ビジネスの比重が紙からWebへとシフトし、多様なデータが手に入るようになっていたが、データ分析や活用を担う組織がなかった。それが非常にもったいないと感じた」(西郷氏)。
西郷氏はデータ分析の効果を伝えるべく、草の根活動を開始。レコメンデーションを使って、売り上げアップを図ったり、統計モデルで広告宣伝費の配分を最適化したりして、徐々に周囲の理解を獲得した。ビッグデータのブームも手伝って、チームを立ち上げるところまで漕ぎ着けた。
業務部門との二人三脚でデータをビジネスに活かす
ビッグデータグループに所属するデータサイエンティストは、それぞれ住宅や自動車、就職など、リクルートの各事業を受け持つ。マーケティングや営業の担当者と、定期的にミーティングを開催、課題やアイデアを持ち寄って、どんなデータ活用があり得るか、どんな分析が必要かを話し合う。
業務の担当者から、「Webサービスの資料ダウンロード数を改善したい」といった相談を持ちかけることもあれば、データサイエンティストから、新しいテクノロジーや、他部署での取り組みを応用して、サービスの改善を提案することもある。
例えば、広告宣伝効果をシミュレーションするツールの予測精度が問題になっていた時のこと。あるデータサイエンティストが提案したのは、ロケットの軌道予測に使用する「一般化状態空間モデル」と呼ぶ手法だった。変化する物理条件を取り込みながら、ロケットの動きを予測するのと同じ要領で、さまざまなビジネス要素を勘案しつつ、広告効果を見積もれると考えたのである。この狙いが見事に当たり、予測精度が大幅に向上。より的確に広告宣伝費を配分できるようにした。
「データ分析はやればやるほどニーズが出てくる。リクルートの規模からすれば、今の人数ではとても十分とはいえない。今後も人数を増やしていく予定だ」。西郷氏はそう意気込む。
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