市場の変化に素早く追随できるシステムを実現するには、企画から開発、運用までの全プロセスを最適化を図ることが不可欠だ。DevOpsの考え方は、既存プロセスや開発・運用支援ツールの利用法を見直すための視点を提供してくれる。各ツールが取得するデータやビジネス関連指標を軸に、共通の目的に向けて動ける強いチームを作りたい。
「これからのプログラム開発は、事業開発そのものへ近づいていく。開発・運用は当然のこと、予算の持ち方や要件の決定方法など、経営層や事業部門を交えた会社組織全体のあり方が問われる」──。アクセンチュアでインフラ構築のコンサルティングに携わる白石 昌靖マネジング・ディレクターは“経営に資するシステム”の実現体制について、こう指摘する。
そこでは、各部門が議論の場で対等でなければならない。現在のIT部門は、そこに自信を持って臨めるだろうか。DevOpsが指摘するアジャイルな開発や、運用現場の徹底した効率化・自動化に取り組み実践してきただろうか。
開発・運用のプロセスを見直す
情報処理推進機構(IPA)が2012年6月に公開した「非ウォーターフォール型開発の普及要因と適用領域の拡大に関する調査」によれば、日本におけるアジャイル開発の普及度は、米国や英国から大きく遅れているだけでなく、成長度でも両国のほかブラジルなどにも後れを取っているという。
アジャイル開発の最先端では既に、「開発手法よりも、アジャイルに動ける人材を継続的に提供するための組織作りにテーマが移っている」(NTTデータの柴山洋德 技術開発本部プロジェクトマネジメント・イノベーションセンタ課長)。にもかかわらず、日本企業は、「契約の仕方が難しい」「検収ができない」といった課題を前に、足踏みしていることになる。課題解決を先送りしては、経営が求めるスピードの実現は望めない。
運用体制についても、「乾いた雑巾を絞り切った」とされる。だが、ガートナージャパンでITインフラストラクチャ&セキュリティを担当する長島 裕里香 主席アナリストは、「例えばITILは本来、企画から開発、運用までをカバーするもの。ところが日本では『運用のため 』といった“誤解”が定着し、全体最適が図られていない。同様の誤解は、内部統制などでも見られる」と指摘する。
運用支援ツールの使い方も不十分という。BMCソフトウェアの小崎将弘ソフトウェアコンサルティング ディレクターは、「各社のツール群は、組み合わせにより全体最適になるよう設計されている。だが日本では、ツールの利用・選択が現場任せのため、ツールの利用も業務ごとにバラバラだ」と実態を明かす。
ビジネス指標との連携が始まる
各種ツールを、システムのライフサイクル全般をカバーする形で利用できれば、ツールが取得するイベントログや技術者の操作ログ、利用者のアクセスログが、プロセス改善のための“宝の山”に変わる。事業担当者、開発技術者、運用担当者のそれぞれが適切な意思決定を下すためのダッシュボード構築が可能になるからだ(図8)。
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