スマートフォン時代を迎え、顧客ニーズの多様化が加速している。加えて、少子高齢化といった社会構造の変革が重なり、顧客獲得競争は激しくなる一方だ。そうした中で、顧客接点を最大限に活用するための考え方として注目されるのがオムニチャネルである。企業情報システムはもう企業内の仕組みにとどまることを許されない時代を迎えている。(志度 昌宏=IT Leaders編集部)
2013年10月7日から20日にかけて、東京・渋谷の東急線渋谷駅の壁面に「SHIBUYA HALLOWEEN SELECT SHOP」と題した大型ポスターが掲出された(写真1-1)。
このポスターにはNFC(近距離無線通信)タグが埋め込まれている。ポスターを見た消費者は、自身のスマートフォンで気になる商品をタッチすれば、商品やコーディネートに関する情報を閲覧できたり、その商品を各社のEC(電子商取引)サイトで購入したりできる。商品が販売されている店舗にまで足を運べばクーポンを受け取れる。
これは、東京急行電鉄、東急百貨店、東急モールズデベロップメント(TDM)、東急ハンズの東急グループ4社が共同で実施した仮想店舗の実証実験。実証をとりまとめた東急電鉄 生活サービス事業本部事業推進部の御代一秀課長は、「再開発が進む渋谷地区において、顧客の経験価値をどう高めていくかが最大のテーマ。従来は、鉄道、百貨店、スーパーマーケットなどのそれぞれが事業展開してきたが、顧客の生活サイクルに合わせた見直し・統合が不可欠になってきた」と話す。
一方、ファッション系ECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイ(現社名:ZOZO)が10月31日に開始した新サービス「WEAR」が、衣料品業界やデベロッパー業界などで議論を巻き起こしている。同社のスマートフォンアプリを使って、店頭で商品タグに記載されているバーコードを読み取れば、その場で商品をオンライン購入できるからだ。リアル店舗の側にすれば、「店頭では商品を見るだけで、実際には料金が安価なサイトで購入するという“ショールーミング”を助長するだけ」に映る。
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