ビッグデータを活用して新たな価値を創出しようとする企業は少なくない。しかしビッグデータを利活用するには、データをどう分析するのかを示した「アナリティクス」を検討することが大切だ。どんな分析手法を用いるのか、どのデータを組み合わせて分析するのかといったアプローチなしにビッグデータ活用は成し得ない。
データ活用からビッグデータ活用に踏み出すならアナリティクス環境を整備せよ
ビッグデータとアナリティクスを組み合わせて効果を挙げた事例を紹介する。
運送業者の米UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)は、1980年代初頭から配送情報やトランザクションデータの活用に乗り出す。これらを収集/分析することで、現在は1日あたり平均3950万人からの荷物の追跡要求に答える。
4万6000台以上の車両にセンサーを取り付け、位置や速度、ブレーキなどの情報も取得する。取得した情報を分析することで最適な集荷/配送ルートの作成に役立てている。これにより、移動距離を年間8500万マイル短縮したほか、840万ガロンの燃料を節約したという。今後は集荷と配送ルートをほぼリアルタイムに変更できるようにする予定だ。
UPSの事例を見ると、分析対象となるデータ量は増え、データが発生する頻度も高まっている。しかし元々は“ビッグデータ”を分析対象にしているわけではない。アナリティクスの分析対象が単なるデータからビッグデータになったに過ぎない。
ここで言いたいのは、データの「ビッグデータ化」に備えてビッグデータ向けの製品やサービス、技術を検討せよということ。大量データを高速処理する技術、ほぼリアルタイムにデータを判別する技術などを検討/導入しなければ、ビッグデータから価値を見い出すのは難しい。
アナリティクスも同様だ。大量かつ高頻度で生成されるデータに対し、どんな分析モデルを適用するのか。どのデータを組み合わせるのかなどを考えておかなければならない。アナリティクスに関する従業員のスキルや活用するための成熟度を高めることも求められる。
企業がいきなり“ビッグデータ・アナリティクス”を実践するのは難しい。ビッグデータを使って価値を探り出すには、まずアナリティクスに関する製品/サービス、組織などを整備することが先決だ。データ量は今後も増え続け、データの発生頻度はさらに高まるだろう。将来を見据えたアナリティクス環境を構築したい。ビッグデータを継続的に利活用するなら、データを収集/蓄積するシステムと並行して、分析/活用するための仕組みや組織を見直すべきである。
筆者プロフィール
SAS Institute Japan マーケティング&ビジネス推進本部長 北川 裕康
富士通や日本DECでソフトウェア エンジニアを経験した後、1993年にマイクロソフトに入社。SQL ServerやVisual Studioなどのマーケティングを担当する。その後、シスコシステムズを経て、SAS Institute Japanに入社。現在はマーケティング本部とビジネス推進本部の本部長を兼任する
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