富士通が12月上旬、記者向けの説明会で「データ統合サービス」の提供に注力していくことを表明した。その背景と中身について解説する。
「ビッグデータを引き合いに出すまでもなく、企業の競争力を左右するのがデータの利活用。しかしその大前提であるデータの一元化や統合ができている企業は非常に少ない。当社として積極的に提案を行っていく」(中村 記章 富士通SI技術本部SVP)──。
富士通は12月上旬に記者向けの説明会を開催。システムインテグレーション事業において、顧客企業の業務データを整理・統合するサービスを推進する考えを明らかにした。「ユーザー企業の間では、Webのアクセスログやソーシャルなど外部のデータ以前に、既存の業務データを活用するニーズが強い。このことは当社のアンケート調査やガートナー社の調査から明らか(図1)」(同)だからだ。
実際、多くの企業は構築年代や利用技術(OSやプログラム言語など)、そして用途が異なる様々な情報システムを運用しており、それぞれに商品マスターや取引先マスターが異なる。当然、生産データや販売データといったトランザクションデータもばらばらだ。そのため「情報システム部門は異なるシステムを連携させるだけで多大な労力を要しているし、販売部門は生産状況を知るのに電話やメールで問い合わせなければならない。事業責任者は計画と実績の現在の差異を知ることができない。そんな問題が起きている」(同社SI技術本部技術戦略室の前田高光シニアマネージャー、図2)。
とはいえ、この問題はずっと以前から指摘されてきたことだけに、そう簡単にはいかない。実際にどうするのか? 前田氏は「可視化、スリム化、最適化という3つのステップを、地道に実施するのが基本」という。まず可視化は、すべてのデータ項目と関係の棚卸しのこと。「非常に地味で大変な作業だが避けて通れない。当社の人事システムの事例でいえば合計435のサブシステムがあり、データ連携は4360に上った。その1つひとつを紐解いていく必要があった」(同)。
そうやって洗い出したものから不要なデータ項目や冗長なデータ連携の有無などを精査し、整理するのがスリム化だ。同じコトやモノを異なる名前で呼ぶ異音同義や同音異義もこのステップで整理する。メタデータの作成も行う。3番めの最適化は、スリム化したデータをもとにして拡張性と柔軟性を備えたデータモデルを設計することを指す(図3)。