[新製品・サービス]
米VMware、年内に「vCloud Hybrid Service」の商用サービスを日本市場で開始
2014年7月18日(金)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
米VMwareの日本法人は、米国および英国で既に提供しているIaaS(Infrastructure as a Service)の「vCloud Hybrid Service」を日本市場でも正式なサービスとして年内にも開始すると7月15日に発表した。同日からベータサービスの提供を始めている。同サービスの提供に向けては、ソフトバンクテレコムが保有するデータセンターを利用する。そのため、新サービスは、米VMwareとソフトバンクテレコム、およびソフトバンク コマース&サービスの合弁事業として提供する。
vCloud Hybrid Serviceは、米VMwareが2013年の「VMworld 2013」で発表したパブリッククラウドサービスだ。日本市場への投入は、アジアでは初めて、世界では3番目になる。今回の発表のために来日したVMwareのCEOであるパット・ゲルシンガー氏は、「クラウドの成長が著しいアジア太平洋地域の中でも日本は最大の市場であり、力強い牽引役だ。長年のパートナーであるソフトバンクグループとともに本サービスを開始できることは喜ばしい」と語っている。
新サービスの主な対象ユーザーは、VMwareの既存顧客。オンプレミスのデータセンターとのシームレスな連携が可能なことを売り物にする。VMwareの顧客数は、全世界で50万社を超える。vCloud Hybrid Serviceも、これらの顧客企業を中心に提供されている。
その象徴の1つが、同サービスには「Hybrid」という単語が含まれていることがある。オンプレミスのVMwareの仮想環境上に構築されたシステムと、クラウド上のシステムとがシームレスに連携できることを強調する(図1)。ゲルシンガーCEOは、「顧客がオンプレミスで運用しているすべてのアプリケーションをパブリッククラウドに修正することなく自由に移行できる」点を繰り返し強調した。
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vCloud Hybrid Serviceは当初、ベーシックなIaaS(Infrastructure as a Service)に加え、日本市場でニーズが顕在化しているデータ保護やDR(Disaster Recovery:災害対策)のサービスが提供される。将来的には、グループ企業の米Pivotalが推進するPaaS(Platform as a Service)や、SaaS(Software as a Service)としてのデスクトップの仮想化サービスなどの提供が検討されている。
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日本市場でのvCloud Hybrid Serviceの投入に向けて、米VMwareは、ソフトバンクグループと手を組んだ(写真2)。具体的には、データセンターなどのファシリティや、そこでの運用業務はソフトバンクグループが請け負い、サービスそのものはVMwareが提供する形を採る。加えて、7000社以上のリセラーを持つソフトバンク コマース&サービスが、営業面から支援する。
今回の発表会には、ソフトバンクテレコム 代表取締役副社長 兼 COO(Chief Operation Officer)である宮内謙氏が登壇し、「ソフトバンクはこれまで世界中の企業を買収してきたが、VMwareの仮想化技術を取り入れたことでサーバー台数は70%以上削減できた。同技術をベースにしたvCloud Hybrid Serviceなのだから、ソフトバンクグループの力をもって、日本中に拡販していきたい」と語った。
ただ、VMwareとソフトバンクグループの合弁事業はエクスクルーシブ(独占的)なものではない。VMware日本法人の代表取締役社長である三木 泰雄 氏は、「vCloud Hybrid Serviceの市場展開においては、ソフトバンク以外のパートナーとの協業も視野に入れている」と語る。今後の展開によっては、ソフトバンク以外の同社パートナー企業との協業の可能性もあるとしている。