政府機関が保有するデータをオープンデータとして公開する「DATA.GO.JP」が正式にオープンした。米国の“DATA.GOVの日本版”と言える。有用であることは間違いないが、現時点では「様々なデータや情報を集めました」といった程度とも言える。本当に役立つサイトにするには、官民の協力が必要だ。
政府支出、選挙結果、交通時刻表、環境汚染レベルなど、主要10分野におけるデータのアクセスのしやすさに関するランキングで、1位は英国、2位は米国、3位はデンマーク。韓国が15位、日本は30位と低迷──。Open Knowledge Foundation がまとめたオープンデータ/オープンガバメントに関する進捗度の結果だ。
こんな状況を変えようと、政府は2014年10月1日、オープンデータのカタログ・サイト「DATA.GO.JP」を正式にオープンした(図1)。アップされているデータの件数は1万2376件。農業や労働など各省庁が発行する白書類、気象観測(レーダー・アメダスなど)の情報や表形式データ、穀物に関する世界各国の生産量や消費量の推移データ、国土地理院の地図・地形データ(http://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do)など、様々なデータをまとめている。
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正式サイトは、2012年から運用してきた試行版サイトに、(1)トップページにおけるデータ検索窓の追加や複数ワードによる検索精度の向上といった使い勝手の改善、(2)データ更新時の通知機能の追加、(3)「選挙」「犯罪と司法」などG8のオープンデータ憲章で合意された優先分野の情報を追加、といった改善を施した。
「これはいいかも」と考えてアクセスすると、確かにオープンデータのポータルとして役立ちそうだが、一方でまだ改善の余地は少なくないと感じた。例えば、サイトにあるのは調査や統計データだけでなく、審議会や検討会議の報告も含まれ、検索結果がやや煩雑なのがその一つ。昭和や平成の初めだけの古いデータも少なくない。新しいデータならともかく、昔のデータだけだと現在の状況が分からないので、参考データとして使いにくい。1万2000件超のデータに占める有用なデータ件数は、必ずしも多いとは言えない印象だ。
筆者の検索能力のせいかも知れないが、あって当然のデータも見つからない。例えば「情報システム」で検索すると、図2のような結果になる。行政機関が構築・運用するシステムがどれだけあり、予算はどの程度か、現在、構築中のシステムはどうなっているのかを知りたいと思っても見つからない。
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海外では例えば米国政府は公開しており、日本でも内閣官房情報通信技術総合戦略室がとりまとめたデータがあるはずだが、見つからないのだ。現時点では非公開なのかも知れないが、そうしたデータを公開してこそオープンデータ/オープンガバメントの取り組みであることを考えると、まだまだ改良の余地がある。
あるいは経産省が毎年実施している情報処理実態調査。2013年版(平成25年版)が公開されているが、DATA.GOVで「情報処理実態調査」を検索しても2012年版までしかヒットしない。総務省の情報通信白書は最新の26年版がヒットしたが、表示順位は6番目。トップ5はなぜか過去の情報だった(図3)。
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とまあ、現在のところ不満や課題はある。しかしデータの公開に必ずしも積極的ではない省庁もあるはずだし、本格運用が始まったばかりで、DATA.GO.JPの実態は“バージョン0.9”と言えるもの。用意されている意見受付コーナーを使って「諸外国の同様サイトにあるこんなデータを提供してほしい」といったリクエストを出しつつ、企業や組織、人が使い込んでいくことが、必要だろう。
なお、オープンデータとはインターネット上に「公表されたデータ」のことではなく、法的にオープン(=オープンライセンス/広く開かれた利用条件)であり、技術的にオープン(=編集加工のし易い形式)なデータを指す。したがってDATA.GO.JP上のデータは原則として自由に利用・活用できる。所管する内閣官房の情報通信技術(IT)総合戦略室は、この施策を通じてDATA.GO.JPのAPIを利用したアプリケーション開発や、新産業の創造などを目指している。