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[市場動向]

IT戦略を投資家に開示せよ!経産省が「攻めのIT」加速に向け新施策

2014年10月7日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

攻めのIT投資を増やすには、経営トップの認識や理解が欠かせない。そこで投資家への情報開示を通じて、経営者の意思改革を促す−−。経済産業省がこんな施策を推進中だ。2015年度初めには、「IT銘柄」を選定し公表する計画である。

 米調査会社のGartnerは2年前に「Pace Layard Application Strategy」という概念を打ち出した。企業ITをSystems of Record(記録)と、Systems of Differentiation(差別化)、Systems of Innovation(革新)の3つに分け、それぞれに投資戦略を検討すべきだと説く。経産省の攻めのIT投資の定義には、最後のSystems of Innovationが欠けているように思える。

 結果、評価指標も、納得感こそあるものの、旧来の発想の枠内に収まっている感がある。現時点の評価指標は、(1)中長期経営計画における攻めのIT活用・投資の位置づけ、(2)攻めのIT投資の企画に関わる社内体制およびIT人材、(3)事業革新のためのIT活用など、の5項目である(図2)。

IT銘柄の評価指標見える化ための評価指標
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 しかし「攻めの」や「事業革新」という接頭語がなければ、いずれもやっていて当然のこと。今日では「Software Defined Business」(ソフトウェアがビジネスを決定づける)という言葉があるほど、経営とITの距離感が大きく変わっている。そうであれば、例えば「技術情報を調査し、探し求める専任チームを置いたり、ITベンチャーの技術を意欲的に調達したりすることを評価する」といった項目が、なぜないのか?

 あるCIOは、自ら足を運んでITベンチャー企業を訪問し、経営者や技術責任者と議論した上で、その企業の製品を採用することを実践している。ITベンチャーの成長に直結し、それは自社にとってもメリットがあるという考え方だ。

 あるいはITのメッカである米国のシリコンバレーに赴き、現地のIT企業のCTO(Chief Technology Officer)などと議論した上でIT投資計画を立案したり、修正したりしているCIOもいる。事業計画からITを調達するだけではなく、ITにヒントを得て事業計画を立案するアプローチである。

 ITを事業や製品に組み込んだR&D(研究開発)の評価項目もない。前述のGEのコト売りは、エンジンに取り付けたセンサーなどの情報を集約して分析し、故障を予知する。当然、最初から成功するとは限らず、R&Dが欠かせないはずだ。3番目の項目がそれに当たるのかも知らないが、違うようにも読める。

 もちろん「ITを製品や事業に組み込むようなR&Dは企業のIT戦略の範囲外」なのかも知れない。何よりも図の5項目は“案”であり、まだまだ変わる可能性がある。評価指標がどうあれ、衆目の一致する企業から30社程度は選定可能だろう。

 だが、いったん策定した指標は、軽々に変更しにくいはず。情報化を加速するためにも、先を睨んだ指標を策定して欲しいと願う。なお全体の工程表(スケジュール)を図3に示す。

IT銘柄公表に向けたスケジュールIT銘柄公表に向けたスケジュール
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 やや見づらくて恐縮だが、攻めのIT投資を実践する企業の選定・公表は、上場企業と中小企業に分かれている。中小企業向けには指針やガイドラインを年内に公開する計画である。
 

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