Webベースの業務アプリケーションをノンプログラミングで超高速に開発することを可能とするツール「Wagby」。今、その活用形態が新たな段階に入ろうとしている。2014年11月7日に東京・秋葉原で開催された「Wagby Developer Day 2014」の午前中のセッションでは、株式会社ジャスミンソフトの代表取締役、贄良則氏が基調講演を行った。本稿では、Wagbyの最新状況と新たな活用形態、そして将来展望をレポートする。
“超高速開発”が目指すデータモデリングの世界とは
ここ数年で、にわかに脚光を浴びるようになった“超高速開発ツール”。ジャスミンソフトのWagbyもこの超高速開発ツールに分類される有力なツールの1つである。
超高速開発というと、ノンプログラミングでソースコードを自動生成するRADツールのようなものだと思われがちだが、その実態は異なる。ジャスミンソフトの代表取締役、贄良則氏は超高速開発について、「ソースコードを資産にするのではなく、設計情報(リポジトリ)そのものを資産にするアプローチに軸足を置いている点でRADツールとは異なる。データとデータの関連性を見つけ出し、その関連性によってシステム全体をデザインしていくデータモデリングの手法をベースとするツールだ」と解説する。つまり、超高速というのは結果としてもたらされる副次効果という位置づけだ。
超高速開発ツールはここ数年で、普及に弾みがついたと言われる。Wagbyの導入実績を見ると、2014年11月1日現在で採用社数が261社、プロジェクト数では396に達する。「“超高速開発”という用語が使われ始めた2012年ころからプロジェクト数は急速に伸びた」(贄氏)という。
設計情報をより高度に活用する新たな入力ツールのインパクト
超高速開発ツールはどのような進化を遂げようとしているのか。ジャスミンソフトでは、2014年1月にWagbyをR6からR7へとメジャーバージョンアップし、11月に入って2014年秋版(R7.3)の提供を開始している。
R7の機能強化の大きな目玉は、Webベースの新しい設計情報入力ツールを採用したことにある。R6までは、設計情報の入力にマイクロソフトの表計算ソフト「Excel」を使用しており、いくつかの課題を抱えていた。入力チェックがシート単位という仕様でモデル全体にまたがる整合性をチェックしにくい、モデル当りの項目数が増えてくると動作が遅くなってしまう、Excelのバージョンアップのタイミングで不具合が発生することがある、新旧の設計情報(バイナリーファイル)の比較が難しい、といったものだ。
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新しい設計情報入力ツールでは、こうした課題を解決したほか、設計情報をより高度に活用する工夫を加えた。贄氏は、「すべてはデータモデリングをよりしやすくするための機能強化だ」と話す。枝番の自動生成、論理削除、条件分岐を指定できるワークフロー、マップビュー、ポータル画面、国際化、バッヂジョブなど、R7では、数々の機能をサポートしている。