「経営とITの融合」−−。これは、企業ITが抱える重要なテーマの1つである。その課題解決に向けた小さな一歩が、東日本大震災の爪跡を今も残す宮城県石巻市で踏み出された。同市にある石巻専修大学経営学部の学生たちが、ゼミ一環として、ITによる経営課題の解決に取り組み、その成果を発表した。企業ITの視点で見ると極めて初歩的で、ほとんど意味がないようにも見えるが、本誌読者には、このような教育が動き出していることも是非知っておいてほしい。
「きれいなコード」の必要性に気づく学生も
一方のシステム班では、システム開発の初心者たちが、VBA(Visual Basic for Applications)を覚えるところから始め、Excelベースのアプリケーション開発を目標にした。
とはいえ、ITベンダーのように、課題解決策をいきなり提案するわけにはいかない。「何から手を付ければいいのかすら分からなかった」(参加した学生)ことから、サポーターからの助言をもとに、協会が何を求めているのかを再ヒアリングし、業務の課題を抽出してからシステム作りに取り掛かった。
まずは、「車両DB」「利用者DB」「タイヤDB」「担当者DB」など、用途別のシートを作成した。従来は、タイヤや車検など様々な情報が、1つのExcelシートに入力され、膨大な情報量になっていたからだ。
情報入力用のボックスを用意し、入力した情報を各シートに反映させる仕組みを作成した。シートを複数に分けたことから、入力作業の多重化を回避するためだ。目的の情報に素早くたどり着けるように検索機能も付加した。
今回のプロジェクトに参加した多くの学生が、ITへの興味を掻き立てられたという。これまで触ったこともなかったプログラムのイロハを学び、チームで作業することで「メンバーに見せて共有しやすいように、きれいなコードを書く」ところまで気づきを見せる学生もいた。ITやシステム開発に本格的に取り組みたいという学生もいたようだ。
今後、学生たちがどの道に進むのかは、本人たちの意思による。ITベンダーに進む道もあれば、ITを有効に活用した事業を起こす起業家への道もある。舛井准教授は、「学生たちの中から、石巻にこだわった、石巻発のベンチャー企業が誕生したら嬉しい」と期待を寄せている。
いずれにしても、どこの大学でも実践することが困難な経営におけるITの実践的な活用方法を実体験として学べた学生たちが今後、社会でどのようなイノベーションを起こしていくのか、注目される。