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[調査・レポート]

市場予測データから読み解くビジネス環境の近未来

2015年12月24日(木)川上 潤司(IT Leaders編集部)

ITを専門とする市場調査会社を中心に、2016年以降の注目トレンドや注力すべきテーマをまとめたレポートが発表されている。今、ITリーダーが頭に入れておくべき数字として興味深いものばかりだ。主要なものをピックアップして紹介する。

 「2020年にはインターネットに接続されるデバイスが500億個に達する」──。2011年4月にCisco Consulting Services(CCS、当時の組織名はCisco Internet Business Solutions Group)が公表したホワイトペーパーは、インターネットがモノ同士を接続する位置づけとして発展することを、いち早く指摘したものの1つだ。インターネットに接続する機器数が2008年から2009年にかけて爆発的に増加したことに着目しており、前述の予測に言及している。数字そのものの正確性はさておき、テクノロジーの発展、それによって変わりゆく世の姿などを見通す上で、参考になる指標だ。

 このように近未来を予測した数字やキーワード、メッセージは数多くある。ここでは、2015年9月以降に、IT業界の代表的なリサーチ会社や公的団体が発表した、興味深い市場予測を紹介する。ビジネスを取り巻く環境の変化を考える上で、頭にとどめておきたい。

ガートナー「Gartner Predicts 2016」

 企業のビジネスに大きな影響を与える今後の展望をまとめたもの。米ガートナーが2015年10月6日に発表した。

【出典】ガートナーの発表資料を元に一部を抜粋して編集部が作成。プレスリリースは https://www.gartner.co.jp/press/html/pr20151028-01.html 

2018年までに、ビジネス・コンテンツの20%はマシンが作成するようになる
 自動作文エンジンが情報をプロアクティブに収集し提供するテクノロジによって、ビジネス・コンテンツの作り手が人間からマシンへと移行する流れが促進される。株主向けの報告書やプレスリリース、ホワイトペーパーなどのビジネス文書は、すべて対象となり得る
2018年までに、サポートをリクエストするコネクテッド・シング (オンライン化されたモノ) は60億に達する
 物理/デジタルの境界がますます曖昧になりつつあるデジタルビジネスの時代において、企業は「モノ」をサービスの顧客として捉えることが必要になる。これらのモノが生み出すサポート・リクエストの飛躍的な増加に対応するための仕組みが不可欠に
2020年までに、人間のコントロール外にある自律型のソフトウェア・エージェントが、経済取引全体の5%を担うようになる
 自主性を備えた新しいソフトウェア・エージェントはそれ自体が価値を発揮し、ガートナーが「プログラム可能な経済」と呼んでいる、新しい経済環境の基本要素としての役割を果たす。現在の金融サービス業界を根本から変革する可能性がある
2018年までに、世界の300万人以上の労働者が「ロボ・ボス」の管理下に置かれる
 人間でなければ行えなかった意思決定を、ロボットの上司が自動的に行う場面が増える。人事の判断や管理面のインセンティブに基づいて学習するように調整したスマート・マシン・マネージャーは、これらの評価情報をより効果的かつ迅速に活用する
2018年末までに、スマート・ビルディングの20%がデジタル・バンダリズム (破壊行為) の被害を受ける
 セキュリティ対策が不適切なスマート・ビルディングでは、攻撃などに対する脆弱性がますます高まる。電子看板の改変やビル全体の停電など迷惑行為レベルのものも少なくないが、経済面や健康面、安全面、セキュリティ面などで重大な影響をもたらす
2018年までに、急成長企業の45%でスマート・マシンのインスタンス数よりも従業員数の方が少なくなる
 進化し続けるスマート・マシンのテクノロジは、人手による労働力を大きく上回る優位性をもたらす。スーパーマーケットの完全自動化や、セキュリティ企業におけるドローンのみの監視サービスなど、適用し得るビジネス領域は広い
2018年末までに、複数のチャネルおよびパートナーにわたって、顧客デジタル・アシスタントが顔と声で個人を認識するようになる
 卓越したカスタマー・エクスペリエンスの最後の一歩となるのが、顧客デジタル・アシスタントによる顧客とのシームレスな双方向のエンゲージメント。人間と同じように会話し、履歴などの時間感覚、その場における状況認識も含めて対応する能力を備える
2018年までに、200万人の労働者が雇用条件の1つとして健康モニタリング・デバイスの着用を求められるようになる
 危険が伴う職種や身体的な負荷が高い職種において、ウェアラブル・デバイスで労働者の健康状態をモニタリングする企業が増える。着用者の心拍数、呼吸、ストレス・レベルなどをモニタリングすることで、必要に応じて即座に支援を提供することが可能になる
2020年までに、モバイル・インタラクションの40%をスマート・エージェントが担うようになり、ポストアプリ時代が優勢となり始める
 スマート・エージェント・テクノロジはクラウド型のニューラル・ネットワークとともにユーザーのコンテンツと挙動をモニタリングしてデータ・モデルを構築・管理することで、人やコンテンツ、状況などを推論するようになる
2020年末までに、クラウドにおけるセキュリティ障害の95%は顧客を原因としたものになる
 クラウド・コンピューティングは、扱いに慣れていないユーザーが質の低いプロセスを実行する上で非常に効率的な手段となるが、これは同時にセキュリティやコンプライアンス上の問題が簡単に広がることにもつながる

ITR「2016年に注目すべきIT戦略テーマ」

 企業が2016以降に取り組むべき重要なIT戦略テーマや、それに関わる市場予測をまとめたもの。2015年10月6日に発表した。

【出典】アイ・ティ・アール(ITR)の資料を元に、一部を抜粋して編集部が作成。詳細は https://www.itr.co.jp/library/presentationmaterials/T201510K03-pdf.html 

デジタルビジネス創出に向けた体制・プロセスの確立
 2018年までに、消費者向け製品・サービスを提供する大企業の40%以上が、デジタルビジネスを推進する機能を有する組織を設置する
デジタルマーケティングへの注力
 2018年までに、消費者向け製品・サービスを提供する大企業の70%以上が、デジタルマーケティングに着手する
サービスデザインによる顧客価値向上への取り組み
 2016年までに、一部の先進的な企業が、サービスデザインの要素を取り込みつつデジタルイノベーションを実現する
イノベーションおよびビジネス強化のためのIoTの推進
 2018年までに、IoTを既存ビジネスに活用する大企業が50%を超える
SoEのためのシステム構築手法の確立
 2017年になっても、大企業において、IT部門がスマートデバイス・アプリ開発の主導権を持つケースは半数に満たない
多台数化したモバイルワーク支援体制の確立
 2018年までに、スマートデバイスを従業員の半数以上が業務に利用する企業の割合は、全体の50%に達する
データ分析システム基盤の再構築
 2018年までに、大企業の30%以上がビッグデータを含むデータの戦略的活用を強化するために、データ管理基盤の再構築に着手する
データライフサイクル管理体制を視野に入れた情報漏洩対策の強化
 2018年までに、大企業の40%以上の企業において、多重・多層防御管理が進み、インシデント検知および予防対策としてのツールの導入を行う
業務委託に係わる再委託先管理の強化
 2018年までに、大企業の50%以上で再委託先管理の動きが広がる
グループITの全体最適化とサービス化
 2018年までに、大企業の70%以上はグループ共通のITインフラを整備する

●Next:IDC、世界経済フォーラムによる未来予測

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