[調査・レポート]

2016年、中堅・中小企業のIT投資・活用はこうなる─ノークリサーチ分析

2016年1月12日(火)IT Leaders編集部

IT市場調査会社のノークリサーチは2016年1月12日、「2016年中堅・中小企業のIT活用における注目ポイントと展望(業務システム編)」と題した調査概要を発表した。同社が2015年に実施した複数の市場調査結果を基にまとめたものである。

今後の製造業で生産管理システムがはたす役割

 次に紹介されたのは、ノークリサーチが主に製造業の中堅・中小企業に対して実施した、生産管理システムに関する調査結果である。図2は、生産管理システムが持つべき機能や特徴(今後のニーズ)を問うた設問において、回答割合が高い項目をプロットしたものだ。

図2:生産管理システムが持つべき機能や特徴 ※複数回答(出典:ノークリサーチ「2015年版中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」)
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 グラフのとおり、原価管理に関連する項目が多く挙げられており、収益性のさらなる改善が重視されていることがうかがえる。製造業の中でも広い裾野を持つ自動車関連についてノークリサーチは、新興国における需要の鈍化や、独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れ不正に起因する業界全体の規制強化に伴うコスト増による影響が広く波及する可能性について言及している。

 同社は、平成28年度税制改正では中小企業向けの支援として「新たな機械装置の投資に係る固定資産税の特例」が盛り込まれたが、現段階では生産管理システムなどのソフトウェアは対象となっていないことを指摘。一連の状況を踏まえると、製造業向けの生産管理システムにおいては、初期投資負担を抑えたソリューションへのニーズが高まるとしている。

 製造業全体で見るとプラスの要素も幾つかあるとして同社は、なかでも注目すべきトピックとして、TPP合意に伴う「原産地規則」の活用、繊維ビジョン、食品製造に関連する「地理的表示保護制度」の3つを挙げてそれぞれについて説明している。

 原産地規則とは、ある製品の製造において、TPP参加国域内での部品調達および付加価値(組立作業など)の合計割合が55%以上であれば、TPP域内での関税について優遇措置を受けられるというもので、製品の種別によってはこの条件がさらに緩和される。「この原産地規則によって、中小の部品生産メーカーは国内生産を続け、組立・加工の一部をTPP参加国で行うといった柔軟な選択も可能となる。技術力はあるが、海外移転が難しかった中小製造業にとっては好機と言える」(同社)

 一方で、例えば、同じ東南アジアの中でも、TPP非参加のタイから参加国であるベトナムに製造拠点を広げるといった海外展開の拡大も考えられる、と同社。平成27年度補正予算案や平成28年度予算案には中小企業の海外展開を支援する幾つかの支援事業もあり、これらを活用した海外展開事例も出てくることが予想されるとしている。

 繊維ビジョンは、TPP合意を受けて今後は衣類やタオルといった繊維製品の、米国などにおける輸入関税も順次引き下げられていくことから、中国を始めとする海外での製造が多くを占めていた繊維産業において国内生産比率を再び高めようとする施策を指す。同ビジョンを主導する経済産業省では、繊維関連の製造業者とアパレル小売業の連携強化なども施策に盛り込み、その実現手段としてのIT活用が期待できるという。「中長期に渡る施策となるが、ITソリューションを提供する側としては新たな市場として注視しておく価値がある」(同社)。

 地理的表示保護制度とは、農林水産物(米、野菜など)、飲食料品(豆腐、オリーブ油など)、加工品(木材、生糸、真珠など)が、特定地域の持つ特性(気候、風土、伝統的な製法など)と強く結びついている場合に、国がお墨付きを与える制度のことだ。

 ノークリサーチでは、農林水産省が主導し、2015年6月から運用が始まったこの制度を活用することにより、特色を持った地方の食品製造業がECによる通販へ取り組むなどといった動きを予測している。また同社は、地理的表示保護制度による産品登録を受けた後も、企業は品質管理に関するチェックを受ける必要があるため、品質管理を担うシステムやサービスへのニーズも予測する。

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