IT市場調査会社のノークリサーチは2016年1月12日、「2016年中堅・中小企業のIT活用における注目ポイントと展望(業務システム編)」と題した調査概要を発表した。同社が2015年に実施した複数の市場調査結果を基にまとめたものである。
ワークスタイル改革の進化ベクトル
最後にノークリサーチは、2015年に中堅・中小企業においても注目を集めたワークスタイル改革についても言及している。現在、ワークスタイル改革を促すIT活用としては、グループウェアなどのコラボレーションツールによる情報共有や、デスクトップ仮想化(VDI)などを用いた社外からの業務遂行といった、情報や空間をシェアするタイプのソリューションが比較的多いと同社は分析。そして、ワークスタイル改革のさらなる進化の方向性の1つとして、「ヒトが担っている作業(主に定型化が可能な業務)の自動化」を挙げている。
図4は、ワークフローを導入済みの中堅・中小企業に対して、ワークフロー製品/サービスが持つべき機能や特徴(今後のニーズ)を尋ねた結果のうち、機能面に関する項目をプロットしたものだ。
「情報や空間がシェアされていても、ヒトからヒトへの業務引き渡しが円滑でなければ企業全体のパフォーマンスは向上しない。定型的な業務の場合には、『次に何をしなければならないか』の判断をヒトが行うよりも、ワークフローで管理された業務フローに沿って進めるようにした方が迅速・確実な場合もある」と同社。回答企業から「ヒトが行う作業も含めた全体の効率化を実現できる」や「定型的な業務フローの遂行を支援することができる」といった項目が挙げられている点は、ヒトが担っている作業の自動化の必要性を中堅・中小企業も気づき始めていることを示すものだとしている。
また、図5は、CRM(顧客関係管理)システムを導入済みの中堅・中小企業に対し、CRM製品/サービスが持つべき機能や特徴(今後のニーズ)を尋ねた結果のうち、機能面に関する項目をプロットしたものだ。
グラフにあるように、「ワークフロー関連の機能が包含されている」が最も多く挙げられており、ここから、ヒトからヒトへの業務引き渡しを円滑にすることが求められていることが見てとれる。これに、「独自のアプリケーションを自社で作成できる」「顧客の嗜好に合わせた商材や情報を提供できる」への回答が続いた。
ヒトが担っている作業の自動化を担うシステムとしては、以前にもBPM(ビジネスプロセス管理)やEPM(Enterprise Performance Management:企業実績管理)などが存在した。ノークリサーチは、これらの多くは大企業を想定しており、中堅・中小企業が実践することは容易ではなかったと指摘。「今後は中堅・中小企業にも導入・運用が可能な、ヒトが担っている作業の自動化に関する取り組みが生まれていくと予想している。