[調査・レポート]

5GやIoT、Windows Phoneも登場―MWC2016

2016年3月1日(火)IT Leaders編集部

スペイン・バルセロナで2016年2月22日から25日(現地時間)にかけて開催された、世界最大規模のモバイル見本市「モバイル・ワールド・コングレス2016(MWC2016)」。毎年モバイル・ネットワーク関連の新製品・サービスが紹介されている。今回は、モバイルを活用したIoT(Internet of Things:モノのインターネット)のほか、エンタープライズ向けの製品、ソリューションも目立った。

5G時代を見据えた取り組み―NTTドコモ、HUAWEI、Ericsson

 第5世代移動通信、いわゆる「5G」は、早ければ東京リンピック・パラリンピックが開催される2020年前後の商用化が期待されている。多くの通信キャリア、ネットワークベンダーが5G実現に向けた実証実験などを開始しているが、MWC2016でも複数の事業者からその取り組みが紹介された。

 IoTでの活用が見込まれている5Gは、グローバル企業が協業体制で取り組んでいるのが特徴といえるが、日本のNTTドコモはMWC2016直前の2016年2月22日(日本時間)、韓国の通信事業者であるKT、SKテレコム、米Verison Communicationsと、5Gの実証実験の仕様の共通化を目指した「5G Open Trial Specification Alliance」の立ち上げを発表、これをMWC2016のブースで紹介した。

 中国の通信機器メーカーであるHUAWEI(ファーウェイ)も、NTTドコモやチャイナ・モバイル、ボーダフォン、ドイツ・テレコムといった通信事業者との協業による実証実験の成果を公開した。

 スウェーデンの通信機器メーカーであるEricson(エリクソン)は、IoTと5Gへの取り組みの一環としてアマゾンウェブサービス(AWS)との提携を発表した。展示は、これまで行ってきたパートナー企業との実証実験の模様を紹介している。

省電力広域ソリューションを発表―GSMAモバイルIoTイニシアチブ

 5Gとともに注目を集めたのが、IoTだ。世界のモバイル通信事業者団体であるGSMAの中でIoTを推進する組織モバイルIoTイニシアチブは、M2M向けの省電力ネットワーク「LPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク」の普及を目指している。

 同イニシアチブには、AT&Tやエリクソン、ドイツテレコム、ファーウェイ、インテル、ノキア、ボーダフォン、NTTドコモ、KDDIなど世界の代表的なモバイル関連企業30社が参加している。

 MWC2016では、狭帯域IoT(NB-IoT)、エクステンデッド・カバレッジGPRS(EC-GPRS)、LTEマシンタイプ通信(Cat-M)を基盤とするソリューションが紹介された。具体例として、「スマートな農業とネットワーク接続したブドウ園」「ネットワーク接続した電気自転車、IoT水道メーター、ペットの追跡」などのデモを実施した。

Windows Mobileの新しい形を提案―HP

 最後に、MWC2016の主役であるモバイルデバイスからは、HPの「HP Elite x3」を紹介する。Windows 10 Mobile搭載のビジネス向けスマートフォンで、Qualcommの最新プロセッサーであるSnapdragon820を採用したハイスペックモデルとなっている。それにも増して注目なのは、オプションとして用意された2つのドッキングステーションだ。

(写真1)HPデスクドックにElite x3を挿すだけでモニターやキーボードが利用できるようになる

  「HPデスクドック」(写真1)を使うと、Elite x3をデスクトップPCとして使えるようになる。外部モニターを接続するディスプレーポート1つ、USB-Aポート2つ、USB-Cポート1つ、有線LANポートを搭載しており、ドックにElite x3を挿すだけでアプリの作業を、手持ちの大型モニターとフルサイズのキーボードで行えるようになる。

(写真2)HPノートドックは12,5インチディスプレーと薄型キーボードのセット

  「HPノートドック」(写真2)は、Elite x3を「ノートPC化」する製品。12.5インチのディスプレーと薄型キーボードがノートPCのようにつながったドッキングステーションだ。見た目はほぼノートPCだが、バッテリーを積んでいるだけでCPUやソフトウェアは搭載していない。Elite x3とつなぐことで、ほぼノートPCとしての役目を果たす。

 タブレットPCとノートPCの2 in 1は、マイクロソフトのSerfaceを筆頭に、多くのメーカーから発売されているが、スマートフォンとノートPCの2役をこなすモデルは初となる。ノートドックには余計なものを積んでいないため、相当軽量化を図ることができるはずだが、持ち運ぶ際に取られるスペースは「スマートフォンとノートブックPCの2台持ち」と変わらないことになる。

 Elite x3は、2016年夏以降にKDDIから国内発売されることが発表されている。ビジネス向けとはいえWindows 10搭載のスマートフォンとしては初のキャリアモデルとなる期待感もある。ExcelやWordを使った煩雑な作業に辟易としている「モバイルファスト」なビジネスユーザーを当て込んだ製品といえる。

 Microsoftは以前から、Officeとの親和性の高いWindows Phoneへのビジネスユーザーからのニーズは高かったといってきた。その点からも期待できるElite x3だが、重量以外に「スマートフォンとノートブックPCの2台持ち」を超えるメリットを訴求できるかが普及のポイントとなりそうだ。

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