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[インタビュー]

再生水プロジェクトで世界有数のデータセンター集積地に―バージニア州ラウドン郡の実践

米ジョージ・ワシントン大学 工学・応用科学スクール 教授講師 ジョン・E・ビショフ博士

2016年5月18日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

米バージニア州北部、ワシントンDC郊外に位置するラウドン郡(Loudoun County)。自然豊かなこの地帯に、驚くほどの数のデータセンターが集積している。要因は3つ。1つは高速なネットワーク接続環境、もう1つは安価な電力、そして3つ目にして決定的な要因となったのが、同郡が推進した再生水プロジェクトだ。ICT分野での長年の経験と知見をプロジェクトに注いだ、米ジョージ・ワシントン大学 工学・応用科学スクール 教授講師のジョン・E・ビショフ博士(John Bischoff D.Sc.)に、画期的な「データセンター街おこし」の軌跡を聞いた。

廃水フローと再生水需要予測

――データセンターがどんどん増えていく中で、水処理施設のキャパシティは大丈夫なのでしょうか。

 廃水フローと再生水需要のグラフを見るに、キャパシティの上限に到達するまでにはまだまだ余裕がある(図5)。2014年の使用量が180万ガロン/日で、現在、この地区で建設中もしくは建設承認プロセス中のデータセンターが向こう1~4年以内に利用を開始すると、400万ガロン/日の需要が生まれる想定だが、十分対応できる計算だ。

 この水処理施設の対象外エリアにデータセンターを作ることはもちろん可能だ。MAE-Eastの広帯域ネットワークの恩恵を受けられ、ドミニオンの安い電力も使え、州の税制優遇のインセンティブもある。しかしながら、再生水がないので、コストに歴然とした差が付く。だからこの地区に集中している。

 このことで、郡にとっては悩ましい問題も生じた。30年前から地下鉄を敷設する計画があり、各駅の周辺にオフィスを誘致すれば雇用対策になると考えられていた。だが、この再生水のメリットが知れわたったために、オフィスビルではなくデータセンターばかりが建ち並ぶことになってしまったのだ(笑)。残念ながら、データセンターはオフィスほど多くの人を雇用することができない。

図5:廃水フローと再生水需要予測(出典:グリーン・グリッド)
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ネットワーク・電力・水の3つの利がかみ合う

――ラウドン郡の成功事例は、ネットワーク・電力・水の3つの利がうまくかみ合った結果であることがわかりました(図6)。20年前には今の姿は想像できましたか。

 まったく想像できなかった。特に、データセンターの空調や冷却に再生水を利用することがここまで有用であることに驚いている。IBMやAOLのデータセンターを管理していたときも、水は最初から計画する要素ではなかった。

 20年間で群の人口が8万人から30万人へと発展し、最新の水処理施設を建設したところが転換点となった。2008年の建設当初、水処理施設は1車線の未舗装道路のところにあったが、今は中央分離帯のある4レーンの高速道路になっている。道路拡張工事に伴って再生水の流路も埋設して、より高速に大量の再生水を送り出せるようになっている。

図6:ラウドン郡にデータセンターが集積する要因(出典:グリーン・グリッド)

――特定の地区にデータセンターがこれだけ集積していると、POF(Pointof Failure:障害点)となってテロの標的にされたりする心配はないのでしょうか。

 IBMに在籍していたときも、そのような心配をしたことがあるが、物理的にも、サイバー的にも、ここよりワシントンDC中心部のほうが格好の標的となるだろう。今どき、DR(災害復旧)やバックアップ体制の整備においては、政府より民間企業のほうが進んでいて、ラウドン郡にデータセンターを構える企業や事業者は皆、他の離れた場所にバックアップを行っている。

 ご存知のように、昨今はビッグデータ分析やIoTが大々的に注目されている。ラウドン郡に複数のデータセンターを構える企業は、光ファイバー接続の高速な分散処理でそうしたニーズに対処できる。これもデータセンター集積地ならではの特徴だ。また、ここのデータセンターと日本のデータセンターの間であっても、あたかも隣り合って存在しているかのような処理が可能だ。かつてのような、56Kbpsのか細い回線でつながっていた頃とは完全に様変わりしている。

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