データセンター データセンター記事一覧へ

[インタビュー]

再生水プロジェクトで世界有数のデータセンター集積地に―バージニア州ラウドン郡の実践

米ジョージ・ワシントン大学 工学・応用科学スクール 教授講師 ジョン・E・ビショフ博士

2016年5月18日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)

米バージニア州北部、ワシントンDC郊外に位置するラウドン郡(Loudoun County)。自然豊かなこの地帯に、驚くほどの数のデータセンターが集積している。要因は3つ。1つは高速なネットワーク接続環境、もう1つは安価な電力、そして3つ目にして決定的な要因となったのが、同郡が推進した再生水プロジェクトだ。ICT分野での長年の経験と知見をプロジェクトに注いだ、米ジョージ・ワシントン大学 工学・応用科学スクール 教授講師のジョン・E・ビショフ博士(John Bischoff D.Sc.)に、画期的な「データセンター街おこし」の軌跡を聞いた。

全米平均より34%も安価な電力

――全体の70%のトラフィックが流れるとは驚きます。データセンターの集積がそこまで進んだのには他にどんな要因があったのでしょうか。

 先に述べたMAE-Eastによるネットワーク接続性がきっかけとなり、そこに電力、そして水という要因が加わって今の発展がある。

 2つ目の電力について話そう。大規模データセンターの電力消費量はおおむね40~100メガワットであり、いかに安価に電力を確保できるかがポイントとなる。

 この地域に電力を提供しているのが大手電力会社ドミニオンの支社ドミニオン・バージニア電力(Dominion Virginia Power)だ。この一帯は石炭ベルト地帯であり、火力発電をメインに電力供給を行っている。同社が設定した産業系法人の電気料金は、米国の平均的な料金より34%も安価である。

 また今後、2019年から2038年にかけて25億ドルの設備投資を行って、シェールガス(非在来型天然ガス資源)を活用する計画がある。同社によると、この期間に顧客は年間平均で2億4,300万ドルのエネルギーコスト削減の効果を享受できると謳っている。シェールガスの利用も始めており、将来もリーズナブルな電力会社であり続けると見ている。

 天然ガスについては、ほかにも面白い動きが出てきていて、民間団体が郡のど真ん中に天然ガスを使った自らの発電所を建設する計画など、プライベート電力会社の参加も促されている。

――自然エネルギーということで言うと、太陽光発電の採用はどうですか。

 この地域では天然ガスの活用が進んだ結果、あまり進んでいるとは言いかたい。現在のところ、バージニア州に設置されている太陽光パネルの発電量はわずか15メガワットである。カリフォルニアの太陽光発電量は1万メガワット超であることを考えると微々たるものである。

 ただし、スローペースではあるものの採用は今後進むだろう。例えば、バージニア州スターリングにあるPrologis Concorde Distribution Centerの屋上には、3,000枚のパネルからなる太陽光発電システムが設置されている。発電量は759キロワットで、屋上設置型の太陽電池アレイとしては、今のところここが最大規模だ。

 さらには、アマゾン・ドットコムが郡から200マイル(約322km)離れたところに25万枚のパネルを装備したメガソーラーファームを建設し、データセンターに電力を供給しようという計画を発表済みだ。

 コスト面で言えば、電力の安さに加えて、ラウドン郡独自のメリットではないが、誘致のための税制優遇制度もある。例えば、データセンター内に運び込まれるIT機器に関しては、販売使用税などはかからない。

空調に使える再生水が他にはない独自のメリットに

――3つ目の要因である「水」は最も興味深いです。なぜ再生水がデータセンターの集積に寄与したのでしょう。

 水こそが、ラウドン郡にデータセンター集積を加速させ、文字どおり繁栄の源になった。20年前、閑散とした農村地帯だった郡は、上下水道というよりは、現実には各家庭に個別に存在する浄化槽が使われていた。しかしながら、その後人口がどんどん増えていくにつれて、それではまかないきれなくなり、セントラルな上下水道施設が必要になった。

 そこで作られたのがラウドン郡水道局(Loudoun Water)である。2008年、バージニア州がダレス国際空港のすぐ北にあるブロードラン(Broad Run)地区に設置した水処理施設だ(図2)。ラウドン郡行政の直轄ではなく、スタッフは郡から配属されるが、運営には口を出さない。収入は顧客の使用料金または開発事業者の基本料金で成り立っており、税金は投入されていない。

図2:ラウドン郡水道局の「Broad Run Line 2008」水処理施設(出典:グリーン・グリッド)
拡大画像表示

 大規模なデータセンターファシリティの空調システムを稼働したり、サーバーやラックを冷却したりするためには大量の水が必要になる。最新の水処理施設ができたことは、住民の快適な生活にとってだけでなく、データセンタービジネスにとってもブレークスルーとなった。先に話した税の優遇制度は、他のさまざまな地方に適用されるものだが、水の恩恵を受けられるのはこの地区だけということで、たくさんの企業や事業者が関心を寄せるようになった。

関連キーワード

データセンター / グリーンIT

関連記事

Special

-PR-

再生水プロジェクトで世界有数のデータセンター集積地に―バージニア州ラウドン郡の実践 [ 2/5 ] 米バージニア州北部、ワシントンDC郊外に位置するラウドン郡(Loudoun County)。自然豊かなこの地帯に、驚くほどの数のデータセンターが集積している。要因は3つ。1つは高速なネットワーク接続環境、もう1つは安価な電力、そして3つ目にして決定的な要因となったのが、同郡が推進した再生水プロジェクトだ。ICT分野での長年の経験と知見をプロジェクトに注いだ、米ジョージ・ワシントン大学 工学・応用科学スクール 教授講師のジョン・E・ビショフ博士(John Bischoff D.Sc.)に、画期的な「データセンター街おこし」の軌跡を聞いた。

PAGE TOP