破壊的な変革で動向が注目されるデジタルビジネスだが、そのデジタルビジネスを体現するハードウェアといえば、モバイル、コネクテッドカー、ロボット、ドローンが上げられる。3Dプリンターも、日夜技術開発が進み、製造や医療の現場に大きな変革をもたらすものとして期待されているハードウェアのひとつだ。IDC Japanは2016年7月28日、その3Dプリンターの国内市場予測を発表した。個人向け市場は一時の盛り上がりを過ぎて伸び悩み、高額の企業向け市場が拡大していくと予測している。
この調査での3Dプリンターの定義だが、IDC Japanは本体価格50万円未満の3Dプリンターを「デスクトップ」、50万円以上を「プロフェッショナル」としている。プロフェッショナルの中でも本体価格3千万円未満を「スタンダード」、3千万円以上を「プロダクション」とセグメント別けしている。
まず、3Dプリンター本体の、2013年から2015年にかけての出荷実績を見ると、2013年の3861台が2014年には2.6倍の9927台に急増している。ところが2015年には20.2%ダウンの7925台と早くも息切れしている。売上額を見ても、2013年の115億円が2014年には1.8倍の208億円まで伸長しているものの、2015年には141億円となり、32.5%の大幅ダウンを記録している。
IDC Japanイメージング、プリンティング&ドキュメントソリューションアナリストの菊池敦氏は、「2014年に3Dプリンターが注目されて出荷台数が急増したものの、その後造形物の限界が明らかになったことなどから、一般消費者の購買意欲が一気に低下したため」とその理由を説明している。
次に、2020年までの予測を見てみる。個人向けモデルであるデスクトップ3Dプリンターの出荷台数予測では、2016年以降も微減を続け、2020年には3701台まで落ち込む。2015年の6336台から年平均10.2%のマイナス成長を続けることとなる(図1)。
一方、企業、プロユース向けのプロフェッショナル3Dプリンターは、2015年に落ち込んだあとは年平均8.2%の成長を続け、2020年には2354台まで増加する見込みとなっている。造形材料の多種化が進み、適用範囲が広がることが成長を後押しすると見られる(図2)。
企業向けでは部品など製造業での活用が一般的だが、IDC Japanの調査では、歯科技工物や人工骨など歯科・医療分野での事例も増えているという。
売上額予測でも、高額なプロフェッショナル3Dプリンターの成長が全体平均を押し上げ、201年の141億円から2020年には200億円まで増加すると見ている。年平均7.3%の成長率となる(図3)。
また、3Dプリンティング周辺のサービスや、材料である三次元造形材料についても、プロフェッショナル3Dプリンターの増加に伴い成長していく見通しだ。
今回の調査では触れられていないが、3Dプリンターにはソフトウェア市場も存在している。3Dプリンターで造形物を作成するためのデータを作成する3Dソフトが多くのメーカーから販売されている。
無料のソフトも出回っているが、企業向けには製造業向けのCADメーカーから出ている3D CADソフトやポリゴンの3D CGソフトなどで、3Dプリンター用のデータが作成できる。製造業向けソフトで知られる仏ダッソー・システムズも3Dプリンターをねらった3Dモデリングソフトを提供しており、「今後、3Dプリンター市場の新たな市場として注視していく必要がある」(菊池氏)としている。