ワークスタイル変革は、ICTの進展と共に長年叫ばれてきた言葉だが、組織全体でしっかり実践し、顕著な成果を上げている企業は思いの外少ない。生産性を高め、イノベーションを生み出す真のワークスタイル変革を実現するためには何が必要なのか。PwCコンサルティングでワークスタイル変革のコンサルティングに携わる井手健一氏に話を聞いた。

変革プロジェクトを成功させるために必要な視点

 井手氏の論は、ワークスタイル変革プロジェクトの推進でたどる道筋に及ぶ。ワークスタイル変革に限らず、何かしら全社的に変革を行う時に発生しがちな状態を示したのが下記のグラフだ(図2)。

図2:変革を行う際に「当初期待する変化」と「実際の変化」(出典:PwCコンサルティング)

 変革というのは、一般的に、学習曲線を考慮に入れるため、上側の線のようなS字カーブを描いて効果が出ると期待される。しかし、現実問題としてこうはならず、たいていは下側の線のようなカーブを描くと井手氏は説明する。変革の取り組み当初は業務にプラスどころかマイナスの効果が生じ、最終的な成果も期待していたほどの結果には届かないというわけだ。

 その理由を、井手氏は2つの視点から解説する。1つ目は、目指す姿の明確化がなされていないことだ。変革施策の取り組みが成功したといえる基準を明確に設定していないまま、ツールやテクノロジーを導入してしまっているケースが多いのだが、それでは社員も目指す姿がわからず、ツールを使用する意欲につながらないため、成果も上がらない。2つ目は、現場社員の“感情”に配慮していない導入が行われていることだ。どんな素晴らしいシステムであっても、自分に何らかの影響を及ぼすものには、人間は抵抗を示すものだ。それに対しての配慮がなされていないと、社員のサボタージュ、ひどいと反対運動につながってしまうことがあるのだ。

 以上、前編として、井手氏が説く、ワークスタイル変革に着手するにあたっての基本的なスタンスと、事前に留意すべきポイントを「4つの要素と4つのハードル」を中心に紹介した。では実際、どのような手法・アクションでワークスタイル変革の取り組みを具体化していけば実現していけばよいのだろうか。後日公開の後編では、その実践の手法を紹介する。

後編:いざ実践!ワークスタイル変革プロジェクト「成功の秘訣」

[Information]
本記事の解説を行ったPwCコンサルティング シニアマネージャーの井手健一氏が、IT Leaders Forumワークスタイル変革セミナーのパネルディスカッションにモデレーターとして登壇します。聴講無料、ふるってご参加ください!

●開催日時:2016年11月29日(火) 13:00~17:10 会場:ベルサール神田
IT Leaders Forum 競争戦略としてのワークスタイル革新
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