[インタビュー]
なぜ今「働き方」を変えないといけないのか、その理由―ライフネット生命の出口治明会長
2016年11月1日(火)河原 潤(IT Leaders編集部)
企画書、メール、電話、会議、顧客アポイント、出張、報告書、伝票処理、経費精算、有給申請……。実にさまざまな「仕事」を日々効率よくこなすのにはどうしたらよいか? 業種や職種を問わず、だれもが必ず「働き方」の問題に突き当たるはず。そんな当たり前にして永遠のテーマを、ベストセラー『「働き方」の教科書』の著者でライフネット生命保険・代表取締役会長の出口治明氏に、組織で取り組むワークスタイル変革と合わせ、とことん語ってもらった。(聞き手・構成:河原 潤 写真:池辺紗也子)
「社会的な人間」が始まる歳と「50代最強説」
――組織が取り組む「ワークスタイル変革」は、社員一人ひとりの「働き方」の集合体とも考えられます。そこで今回は、『「働き方」の教科書』で個人の働き方を説いておられる出口さんに、個人だけではなく、組織の働き方についてもうかがってみたいと思っています。
出口氏(写真1):わかりました。何でも聞いてください。
――『「働き方」の教科書』は年代別の働き方の指南になっていて、50代が最強と書かれていました。
出口氏:はい、50代は無敵だとずっと思っています。平均20歳で人は社会に出るわけですが、それまでは原則、親に養ってもらっています。動物は自分でエサを獲ってはじめて成人とみなされる。つまり、社会的な生産活動を行う人間の始まりが20歳。平均寿命が85歳くらいなので、成人のちょうど真ん中にあたるのが50代になります。
真ん中というのは、いわばマラソンの折り返し地点。後の半分は同じ道を戻ることになります。まあ、そうじゃないコースもありますが。何が言いたいのかというと、すでに走ってきた道だから、人生の後半は、社会の景色がよくわかっているわけです。友達もいるし、仕事も慣れている。だったら、何でもできるじゃないですか。
――58歳でライフネット生命を設立された出口さんご自身が実践されていますね、それは。
出口氏:もう1つ大事なのは、50代になったら、リスクがコストに転嫁している点です。リスクは、その先がわからないからリスクと呼ぶのです。例えば30歳ぐらいで子供ができて、錦織圭選手のようにしたいと思ったとします。でも、子供にその素質があるのか。テニススクールに通わせたり、アメリカに留学させたりでこの先いくらお金がかかるのか。そんなのはまるでわかりませんよね。
でも、子供が大きくなるにつれ、徐々に子供の可能性が見えてくるわけです。あるいは、自分自身についてもそう。50代になって自分が社長になれるかどうかがわからない人はいないでしょう。子供についても、自分についても、ある程度見通せるようになると、リスクは計算可能なコストに変わります。プロ選手は無理だから大学を出て普通に勤めるコースを歩むのにかかるお金。社長にはなれなくても部長にはなれそうなら、そのときの給与。全部、かなり正確なところまで計算できますよね。
――たとえがわかりやすく、深く納得です。私もあと2年で50歳、だいたいこの先が見えてきています(苦笑)。
出口氏:だから50代はいろいろな意味で最強です。経験があって友達も結構いる。自身の健康のこともだいたいわかっている。見通せる将来の可能性から逆算して、職場に残ってもいいし、起業してもいいのです。
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