クラウド、IoT、ビッグデータ、AIなど進化するITに、企業が取り組むべきであることは言うまでもない。問題は一体、どう進めればいいのかだ。既存のビジネスやシステムがある中で、うまく進める方法はあるのかが分かりにくい。米ガートナーによれば、そんな難題を乗り越えるための方策があるという。それが「デジタルビジネス・アーキテクチャー」である。
写真1:米ガートナーのリサーチVPであるマーカス・ブロシュ氏ITは日進月歩で進化し、シェアリングエコノミーやFinTechなど破壊的なビジネスも広がっている。『デジタルビジネスの嵐の中で生き残れるか』という記事を掲載したが、何もしなければ幸運な企業を除き窮地に追い込まれるのは間違いないだろう。
だからといって、やみくもに取り組んでも成功は難しい。「小さな失敗を繰り返すことが成功への早道(=Fail First)」と言われるが、何らかの仮説やガイドラインがないと、失敗かどうかさえ判断できないからである。
ではどうするか。米ガートナーのエンタープライズアーキテクチャー(EA)チームのリサーチバイスプレジデントを務めるマーカス・ブロシュ氏は、その手段として「デジタルビジネスのアーキテクチャー」を提唱する。いったい、これはどんなものか。来日したブロシュ氏に聞いた。
−−まずガートナーはデジタルビジネスをどう定義しているか?
考え方はとてもシンプルだ。「クラウドやモバイル、SNS、IoTなどのテクノロジーを利用して、製品やサービスをイノベート(革新)する機会」である。脅威ではなく機会(チャンス)なのだ。テクノロジーにはVR/AR(仮想現実/拡張現実)やAIもあるし、今後も色々なものが登場する。そのため往々にして我々はテクノロジーをどう活用するかを課題と認識しがちだが、それは正しくない。課題やチャレンジになるのは、何か新しいモデルを創造すること、そのためにリスクをとることである。だからそれはビジネスのマターである。
−−なるほど。次にアーキテクチャーはどうか。
ITの世界では主にテクニカルな意味で使われてきた。システムをどう進化させるのか、新しいテクノロジーを活用するのかを考えるための指標としてである。しかしデジタルビジネスにおいては、ビジネス成果を重視する方向に変わってきている。
例を挙げると、ビッグデータやアナリティックスの重要性は多くの企業が理解している。しかし「ビッグデータの基盤を用意した。だから自由に使って下さい」といっても、それでは使えない。企業や組織において「So What?」となってしまうのだ。自分たちのビジネス、事業のどこに、どうテクノロジーを当てはめればいいのか、あるいはテクノロジーはビジネスの何をどう変える可能性があるのか、戦略面で何から始めるべきかといったことを提示する必要がある。それがデジタルビジネスのアーキテクチャーである(図1)。
図1:デジタルビジネス・アーキテクチャーにおける5つの構成要素拡大画像表示
もう少し詳しく言えば、アーキテクチャーにはデザインとエンジニアリング(実装)の側面がある。ITの世界では伝統的にテクノロジーの議論が中心であり、そのため後者のエンジニアリングを重視してきた。デジタルビジネス・アーキテクチャー(DBA)では、もっとデザインに目を向ける。具体的に落とし込むためのやり方が、人間中心のデザイン(Human Centric Design)であり、デザイン思考(Design Thinking)だ。これらを駆使して、新たなビジネスや製品/サービスを作り出していく。
−−少し整理して欲しい。いわゆるエンタープライズアーキテクチャー(EA)には4つのレイヤー、下からテクノロジー、アプリケーション、データ、ビジネスがある。DBAは、ビジネス変革の観点を包含するようにこれを拡張するイメージか?
企業は破壊的な力に対応し、人やプロセス、組織が望ましいビジネス成果に向けて変化できるように導く、何らかの成果物を必要としている。それがビジネスアーキテクチャーである。デジタルビジネス・アーキテクチャーは、その進化形であり、人やプロセス、組織に加えて、モノを同等のピアとして取り込むものだ。
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