クラウド、IoT、ビッグデータ、AIなど進化するITに、企業が取り組むべきであることは言うまでもない。問題は一体、どう進めればいいのかだ。既存のビジネスやシステムがある中で、うまく進める方法はあるのかが分かりにくい。米ガートナーによれば、そんな難題を乗り越えるための方策があるという。それが「デジタルビジネス・アーキテクチャー」である。
従ってEAのレイヤーとは関連性はあるが、視点が異なる。EAというと自社のシステムのことを考えがちだが、DBAの世界観では外側のエコシステム、つまり顧客やサプライヤー、パートナー、IoTなどに目を向ける。図2を見てほしい。デジタルビジネスにおいてエンゲージメントする対象ごとのTechnology Platformを示したものだ。
(1)バックオフィスなど既存のシステム群から成るInformation Systems Platform、(2)外部向けのWebサイトやSNSのCustomer Experience Platform、(3)物理的な資産やモノを対象にしたIoT Platform、(4)API連携で外部の企業やマーケットプレイスとつながるEcosystems Platform、そして(5)すべてのPlatformに広がる Data and Analytics Platform、という5つの要素がある。
CIOやITリーダーは、これら5つのうち、どれをいつ、インプリメントすべきか、あるいはリノベートすべきかを決定する必要がある。それによってビジネス戦略の方向を決めるからだ。そのためにチェックリストを使う。多くの企業はIoTとEcosystems platformsを持っていないから、投資に躊躇しがちである。だから、これらの構築ではモード2のスタイル、つまりアジャイルに変化させていくスタイルを追求する。
−−理解はできるが、精神論にも聞こえる。
インドのある銀行のCIOと話した時、彼は「ビジネスアーキテクチャーなしに何かを進めると、スラム街ができてしまう」と言っていた。まさしくその通りで、まず都市計画を作り、時代と共に変化させていくべきだ。それをせずに、必要があるたびに大きなビルをどんどん建設するようでは、上手くいかないのは自明だろう。
−−具体的にDBAを描くにはどうすればいいのか。
決まった手法があるわけではない。Technology Platformの5つの要素について必要なこと、足りないことを描き出していくのが基本になる。大事なのはデザインとエンジニアリングのうちデザインを重視することだ。ビジネス側がやりたいことがあれば、それに着目するのが1つだし、お金の流れとか、オペーレーショナルな業務プロセスに着目するのもいい(図3、図4)。その際、将来、どんな問題が生じるのかが、とっかかりになる。一方で重要度が低い部分にこだわらず、ライトウェイトなアーキテクチャーを目指すべきだ。
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−−海外、例えば米国の企業はDBAを策定している?
最先端の取り組みをしているかどうかや、組織によって差があるが、例えば米GE(General Electric)は、データやマシン、顧客を軸にDBAを策定している。DHL、Goldman Sachs、ニューヨークのAcme Bankなども取り組んでいる。企業だけではなく、ニュージーランド政府のような政府機関もある。
−−未着手の企業にアドバイスするとすれば、まず何から始めればいいか。
1つはコアシステムを見て革新的な方向に成長させることだ。キーワードを挙げればモジュラー化やサービス指向、コンポーネント化であり、シンプル化・標準化を進めていく。そしてビジネスの問題、つまり開始点を見つける。この時、小さく始めて成長させる。何らかの結果が出たら、それが成功のストーリーになるし学びを得ることもできる。アイデア、テスト、修正、学びを速いサイクルで繰り返す。これを特定の組織や人に終わらせず、可視化し続けることだ。
重要なのは実践を通じて学び、進化させること。ユニコーン企業と呼ばれる評価額10億ドル以上のベンチャー企業を研究するのもいい。AirbnbやUber Technologiesといった企業がやっていること、成長の過程から学ぶわけだ。繰り返しになるが、実践して学ぶことがとても大切になる。それを可視化して実践するやり方そのものがDBAである。