MDM(マスター・データ・マネジメント)は地味だけど重要―データマネジメントソリューションを提供するインフォマティカが2016年10月21日に開催したプライベートイベント「Infomatica World Tour2016」のオープニングキーノートでスペシャルゲストとして登壇したコニカミノルタ執行役IT企画部長の田井昭氏のことばだ。IoTやビッグデータなど、データが主役となるデジタルビジネスの普及とともにますます重要性が高まるデータに係わるエンタープライズ製品を数々提供するインフォマティカが「Data Powers Business―データに力を、ビジネスに革新を」をテーマに開催したイベントでの注目のセッションを紹介する。
今やデータ統合ソリューションやMDMで世界的に高い評価を得るインフォマティカだが、オープニングキーノートに登壇した吉田浩生社長は「2010年に開催された同じプライベートイベントの来場者は120名ほどだった。今年は400名以上にまで規模が拡大した」と、近年の同社の勢いを強調した。
キーノートでは、インフォマティカのMDMソリューションのユーザーであるコニカミノルタの田井昭氏がスペシャルゲストとして呼ばれ、MDMの重要性を語った。田井氏によると、世界150カ国にセールス/サービス体制を敷き、海外売上が80%を占める同社では、基幹システムとしてSAP ERPを標準採用していた。しかし、導入は各国任せで、14ものインスタンスが存在していたという。
このERPを統合するにあたって、その裏で進められたのがデータ統合だ。田井氏曰く「ERPの開発は格好良いが、マスターデータの統合はいかにも地味」だった。そのため会社の理解も得にくく苦労したという。しかしMDMの重要性を認識していた田井氏は現場の抵抗にもめげずマスターデータ統合を強行した。その際に採用したのがインフォマティカだった。
多くのERPにもMDM機能は搭載されているが、なぜインフォマティカを選んだのか。その最大の理由が「アプリケーション依存を避けるため」だった。SAPのMDM機能を使ってしまうと、ERPのバージョンアップなど本来のMDMと関係のないところで影響を受けてしまうリスクを背負う。それを避けるため、MDMは独立したベンダーであるインフォマティカ製品を選択したというわけだ。
意思決定へのITの依存度が低い日本
また、基調講演を行ったPwCコンサルティング常務執行役の松崎真樹氏は、同社がグローバルで行った「Big Decisions Survay」を元に、意思決定にITを活用することの重要性を訴えた。
拡大画像表示
例えば、社内でデータ活用がどこまで進んでいるかという問いに対して、39%が高度な活用が行えていると回答しているが「逆に残り60%はデータ活用が不十分と感じている」という事実がわかっている(グラフ)。分析ひとつを取っても、その多くは過去に何が起こったのか、なぜ起こったのかの分析に使っており、将来の予測に使われている例はまれだという。
意思決定にマシンがどれだけ依存しているかという問題に関しては、特に日本企業がマシンへの依存度が低いことがわかったという。反対に中国はデータに基づいて意思決定を行っている確率が高い。日本と同じく、マシンへの依存度が低いのが英国で、松崎氏は「ビジネスに伝統があり、長いサイクルで経営している企業が多いのが両国の特徴。こういった企業はマシンへの移行が困難」と説明している。
意思決定にマシンデータを活用している企業は、新市場への参入を、スピードと精密さを持って行える。その典型的な例がマシンへの依存度が高い中国の企業だ。日本では、リーダーの理解がない、予算がないといった問題が、データを活用した経営のバリアになっている。そこで松崎氏は「システム導入だけでなく、企業カルチャーの問題にも切り込むことのできる、データ主導の組織を作る必要がある」と指摘した。
そのほかInfomatica World Tour2016では、セールスフォース・ドットコムやEMCジャパンとの共同講演、ユーザー企業を交えてのパネルディスカッションなど興味深いトラックで、インフォマティカの唱えるデータ活用の重要性を紹介した。