[市場動向]
「世界はOpenStackで動いている」と企業採用の加速をアピール―OpenStack Summit Barcelona
2016年10月27日(木)河原 潤(IT Leaders編集部)
2016年10月25日(スペイン現地時間)、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアであるOpenStackの開発者コンファレンス「OpenStack Summit Barcelona」が開幕した。初日の基調講演に立ったOpenStackファウンデーションのCOO、マーク・コーリア(Mark Collier)氏は、企業利用に関する調査結果と採用事例を基に、OpenStackの現在位置とこの先に向かう方向を示した。(IT Leaders 編集委員 河原 潤=バルセロナ)
OpenStack Summitは、OpenStackプロジェクトの運営団体であるOpenStackファウンデーションが主催する開発者コンファレンスである。米国内の都市とそれ以外の都市でが、6カ月に1度の開催ペースで“世界巡業”を続けている。半年ごとの開催は、OpenStackコアのバージョンアップとほぼ軌を一にしており、今回は14番目のバージョンとなる「Newton」が10月6日にリリースされた直後のタイミングとなる。
オープンソースプロジェクトの成功を決定づけるのはエコシステムの拡大だ。このプロジェクトの進捗と方向性を、開発者/開発企業や、OpenStackをすでに採用したユーザー企業だけでなく、検討中の企業にもわかりやすく示して広く周知することが、年に2回も開催する理由となっている。
初日の基調講演は、半ば恒例化した、マーク・コーリア氏(写真1)によるプロジェクト全体の最新ビジョンの紹介だ。今回、50カ国・5000人の事前参加登録者を集めたバルセロナ開催にあたり、OpenStackファウンデーションは「The World Runs on OpenStack(世界はOpenStackで動いている)」というキャッチフレーズを打ち出している(写真2)。
「ビッグデータ分析に着手した銀行、膨大なビデオストリームを提供するメディア会社、あるいはゲノム分析の研究機関。今やOpenStackは、実にあらゆるビジネスの用途で信頼たりえるプラットフォームとなっている」(コーリア氏)
これが大言壮語ではないことを示すために、コーリア氏は、市場調査会社451グループが実施したOpenStackのユーザー動向の調査結果を引用した。
●OpenStackを採用した企業の業種は、テクノロジー産業は20%でトップだが、残り8割は他の業種だ。内訳は、製造(15%)、小売(11%)、プロフェッショナルサービス(10%)、医療(7%)、保険(6%)、交通(5%)、通信/メディア(5%)、卸売(5%)、エネルギー・公益(4%)、教育(3%)、金融サービス(3%)、政府・官公庁(3%)となっている。
●OpenStackは、今やテストと開発のためのテクノロジーではなく、企業のミッションクリティカルなワークロードを動かしている。複数回答で尋ねたOpenStackの用途(ワークロードの種類)の内訳は、インフラサービスが66%、ビジネスアプリケーションが60%、ビッグデータが59%、Webサービス・Eコマースが57%となっている(写真3)。
●調査への回答者の3分の2は、従業員数1000~1万人の中堅・中小企業だった。ミッドマーケットでの採用が進み、OpenStackが大企業だけのものではなくなっている。
●OpenStackを採用した企業のクラウド基盤の72%は1000~10000コアの範囲で稼働している。
●OpenStackを採用した企業は、エンタープライズ市場全体の中でもコンテナの採用が進んでいる。55%がすでにコンテナを採用している。
●企業がOpenStackを用いる目的は、運用効率の向上が76%、展開スピードの向上が75%、と、この2つが突出したビジネスドライバーとなっている。これに、DevOpsのサポート(69%)、コスト削減(50%)、OpenStack API標準への準拠(45%)が続いた。
講演の後半では、OpenStackの「4つのメイン領域」としてビッグデータ分析、メディアブロードキャスティング、NFV(Network Functions Virtualization)、サイエンティフィックリサーチのそれぞれの事例が紹介された。それらについては稿を改めて紹介する。