工場のラインで特定のタスクを行うのが産業ロボットの役割とすると、人事や財務会計など、コンピューター上で特定の業務処理を行うのがRPA(Robotic Process Automation)だ。ERP、メール、Excelなど異なるシステム間の膨大なデータ入力作業を自動化するRPAは、「働き方改革」の側面で語られることも多いという。多くのITコンサルティング会社がこぞってRPAツールを担ぎ、導入を推進しているのも特徴だ。日本でも複数のコンサルティングファームがRPAを将来性のある分野と捉え、拡販に努めている。
システム間の入力処理を自動化
工場では、生産ラインで製品に部品を取り付けるなど、専用の機械ではなく人の手で行っていた処理をロボットアームが行うようになった。このロボットアームを始めとする、作業を人に変わって行う機器は産業ロボットと呼ばれ、工場の近代化、生産性向上に大きく寄与している。
RPAは、人事や経理、営業事務などの業務領域で人が行っていた、ERPやメール、Excelなど異なるシステム間の入力処理などを自動化するもの。人に変わってソフトウェアがアプリケーションの入力処理などを実施する、いわばソフトウェアロボットだ。
例えば、メールの顧客情報をERPに入力する作業。ECサイトなどで膨大な量のメールを扱っている企業などの場合、複数の担当者がコンピューターに向かってひたすら入力作業を行うことになる。
人の入力スピードには限界があるうえ、入力ミスのリスクもある。特に労働者の勤務環境整備に厳しい昨今、作業時間の延長は容易に行えなくなり、効率化の上限は見えている。RPAは、それらの課題をクリアしたうえで生産性向上を実現する。
米国では、アクセンチュア、KPMGなど多くの大手コンサルティングファームが、複数のRPAツールベンダーのコンサルティングパートナーとして名を連ねている。SAPなどの大規模ERPがほぼ一周したといわれる現在、RPAはコンサルティングファームにとって、将来有望な収益ツールとして認識されつつあるようだ。
コンサルティングファーム各社はそれぞれに、RPA導入のメソッドを持ちユーザーにアプローチしているようだが、ここでは、2016年8月に日本で先陣を切って導入サービスを発表したデロイト トーマツ コンサルティング(DTC)のRPA導入メソッドを参考までに見てみる。
DTCは、RPAを自社導入し、その効果を評価したうえでサービス展開している。まずDTCは、RPA導入を「初期評価」「パイロット導入」「本格導入・展開」「運用・最適化」という4つのフェーズに分けている。
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フェーズ1「初期評価」は、パイロット導入の準備段階となる。ここでは、RPA導入の対象となるプロセスを選定する。対象システムや業務量などから、どこの業務が適しているのか、つまりRPAを導入して成果が出やすいのかを検討する。
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