[インタビュー]

「攻めのITに向けたコストの見直しが重要」第三者保守の米Rimini Street日本支社長

2017年1月19日(木)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

デジタルトランスフォーメーション(DX)など新たな仕組み作りが求められる一方でIT 予算は“青天井”ではない。それだけに、既存システムの運用負荷やコストの削減が課題になっている。その解決策の1つに第3者保守によるソフトウェアの保守費用の見直しがある。独SAPや米OracleのERPパッケージなどの第三者保守サービスを提供する米Rimini Street(リミニストリート)が「保守費用半減」を掲げ日本市場に参入して約3年。日本企業は第3者保守を受け入れているのだろうか。実状を同社日本法人の支社長である脇阪順雄氏に聞いた。

 SaaSの場合は、確かに保守作業がサービスに含まれてはいるが、すべてのアプリケーションがSaaSとして提供されているわけではない。基幹系である会計や在庫管理といったトランザクション系のアプリケーション領域は、なおさらだろう。グローバルに見ても、SaaSの利用が進んでいるといっても、多くの企業は保有するERPパッケージなどをAWSやMicrosoft Azure上で稼働させているのが実状だ。

 欧米企業が第3者保守を採用するのは、ERPパッケージがコモディティ化したからだ。そこに経営面での競争上の価値はない。これからのクラウド化の進展過程では、DBMSもコモディティ化が進むのではないだろうか。データを安心・安全に管理し必要な時に必要なデータを利用できるという機能が求められるのであって、それを実現する手段を問われなくなるからだ。結果、オンプレミス環境を含め「Oracleだから」といった“神話”も崩れていくだろう。

変わらない仕組みに多大なコストを掛ける価値はあるか

米Rimini Street日本法人支社長の脇阪 順雄 氏

 当社は決してERPパッケージやDBMS自体を否定しているわけではない。そこに経営的な価値を見いだせるなら利用するべきだろう。だが、経営的な価値を見いだし難い、例えば“塩漬け”にしたシステムなど変化を求めないシステムであれば、その保守は第三者保守に委ねコストを削減したほうが得策ではないかと提案している。同じ価値が実現できるなら、安価であるほど、別の新たな価値に投資を振り向けられる。

 そうした観点から最近はWindows 10への移行やサーバーの保守切れをきっかけに当社の「TSS(Technology Solution Support)」への引き合いも強い。TSSは、古いアプリケーションが最新OSで動作しなくなることなど解消するサービスである。OSやハードの刷新を理由にアプリケーションまでバージョンアップしていては、経営価値は変わらないのにコストだけが跳ね上がってしまうことを解消できる。

 日本企業の場合は特に、専門技術者を雇用しづらいという欧米企業にはないハンディがある。基幹系だからといってERPのスキルをIT部門のスタッフに身に付けさせられるのか。それよりも人材を新しい仕組み作りにシフトさせるほうが良いのではないだろうか。実際、SAPやOracleの導入を先導したのは、実は「会社を変革したい」という人たちだ。それだけに第3者保守を検討することも早いという事実がある。

 もう1つ、日本企業が良く気にする観点にベンダーロックインがある。ロックインに対しては「されるか」「されないか」の選択肢しかない。ロックインされると決めれば、そのベンダーの製品/サービスをとことん導入し、逆にベンダーへの発言力を強めるべきだ。されないのであれば、アプリケーションやデータが持っている価値を、もっと真剣に考えて、どのプラットフォームにどれだけのコストを掛けるのかを判断する必要がある。

 例えばデータベースでいえば、SAPの「HANA」をF1カーだとすれば、AWSはスポーツタイプの自動車、オープンソースの「Apache Hadoop」はトラックだ。それぞれ用途も価格も違う。どのデータをどの環境で管理するのかを判断しなければならない。にもかかわらず、どのデータも同じ環境で管理しようとしていないだろうか。日本企業の現状は、余りに中途半端で、逆に身動きが取りづらくなっているのではないか。

──ところで米Oracleとは第三者保守に伴う知財侵害で争っていた。その後はどうなったか。

 2015年末に結審し、第3者保守自体に違法性がないことが認められた。ただ当社が第3者保守を提供するために行っていたプロセスの一部は違法だった(関連記事)。そのプロセスは既に廃止しており、現行のプロセスに違法性はない。当社は既に知財の利用権と裁判費用をOracleに支払い済みであり、Oracleに認められていた上告期限も過ぎている。こうした結果を受けて、2016年にはOracleユーザーからの受注も増えている。

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