日本情報シシテム・ユーザー協会(JUAS)は、「企業IT動向調査2017」の速報値として「ビジネスのデジタル化」に関する調査結果を公表した。同調査項目は、今回新たに設置されたもの。調査対象は東証一部上場企業およびそれに準ずる企業で、有効回答社数は1071社。
ビジネスのデジタル化の検討状況を聞いたところ、すでにデジタル化を実施している企業は全体で12.5%だった。うち、成果を上げている企業が5.2%、効果を検証している企業が7.3%だった。検討中の企業も26.7%あり、4割近い企業が実施中もしくは検討フェーズに入っていることがわかった。
この検討状況は、企業規模によって大きく異なる。売上高1兆円以上の大企業がもっとも進んでおり、実施中の企業は48.0%に上る。検討中の42.3%を加えると、実に9割の企業が実施中もしくは検討フェーズに入っているという結果になった。
売上高1000億円以上1兆円未満の企業になると、実施している企業は一気に減り20.2%。検討中の企業は42.8%で、1兆円以上の企業とあまり変わらない。100億円未満の企業では、実施している企業は更に減って6.8%、検討中の企業も15.9%と少なくなる。
1兆円以上の企業では、デジタル化に関心のまったくない企業は0%だったが、1000億円以上1兆円未満では4.8%、100億円以上1000億円未満が17.7%、100億円未満が19.5%と、売上規模が小さくなるほどデジタル化への関心が低下している傾向が明らかになった。
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これを、売上高ではなく業種カットで見てみると、実施している割合がもっとも高いのが金融で17.9%、次がサービスで16.7%だった。金融は実施中を除いた検討中の企業が5割に達しており、他業種に比べデジタル化への関心がが著しく高いことがわかる。グローバルで盛り上がりを見せるFinTechの影響が大きいと見られる。
また、実施中は13.5%で業界別4位に甘んじているものの、検討中が金融の次に多い34.8%だった機械器具製造は、合計48.3%がデジタル化に積極的な姿勢を示しているといえる。なお、もっともデジタル化に消極的だったのが、実施中7.6%、検討中18.8%、関心無しが22.5%の商社・流通だった。
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気になるのが、デジタル化を推進しているのはどの部署なのかだ。全体では、IT部門が18.6%、商品開発、研究部門を含む事業部門が22.5%、デジタル化の専門部門が2.5%、組織化されていないIT部門と事業部門の共同チームが52.9%という結果だった。共同チームと合わせて71.5%にIT部門が関わっていることになる。ただし、デジタル化に特に関心が高い金融では13.5%が専門部門を設置しており、16.2%のIT部門に肉薄している。
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デジタル化に消極的だった商社・流通だが、専門部門を設置しているのは4.8%で、金融に次いで多かった。これ以外の業種ではいずれも2%未満で、どの業種でもIT部門と事業部門の共同チームが多い傾向にある。JUASによると、ビジネスのデジタル化を進めるうえで「ビジネス」と「IT」の両面での知見が求められているからだという。ただし、スタートは急造の共同チームであっても、デジタル化が軌道に乗った企業では、将来的に専門部門へと昇華していく可能性も考えられる。