[戦うソフトウェア資産管理、無駄な資産を一刀両断!]

ライセンス契約の落とし穴はこう避ける

2017年3月23日(木)Courtney Squires(米フレクセラ・ソフトウエア リージョナル・セールス&アライアンス・ダイレクター)

ソフトウェア予算が横ばい、あるいは縮小傾向にあるなかで、多くの企業が無駄にコストを消化しています。初期投資額を中心に考え、ボリュームディスカウントだけを交渉点に定めているためです。初期費用以外の契約条項を十分に考慮すれば、より有利な交渉が可能になります。前回に続き、ソフトウェアの契約交渉におけるトップ10の交渉方法を紹介します。

 前回は、ライセンス契約交渉においてコストを削減するために検討すべきポイントとして、以下の5つをご紹介しました。ポイントのみ再掲しておきます。

交渉点1:所在地と組織上の制限を排除する
交渉点2:新機能などへのアクセスを許可しポートフォリオを変える
交渉点3:初期段階で追加ライセンスの価格を定める
交渉点4:同時接続ユーザー数を最大限に活用する
交渉点5:遊休ライセンスの保留権を得る

 今回は、10の交渉点のうち残りの5つをご紹介します。

交渉点6:契約期間中の保守費も決める

 契約期間に準じた保守費を交渉しましょう。ソフトウェアベンダーのほどんどが保守費のディスカウントはしませんし、その算出基準は、実際に使っているソフトウェアの使用量ではなく導入した数になります。大規模な調達によってソフトウェアライセンスに対し40%のディスカウントを引き出せたとしても、導入数に対する定価での保守費用によって、例えば3年後にはソフトウェアの導入コストと同等の費用が発生する場合があります。

交渉点7:おまけにつけられるSWに要注意

 顧客獲得を目的に、バーゲン価格のツールやソフトウェアオプションといった“おまけ”が提供されるケースは少なくありません。ほとんどの人がバーゲン価格に目がいってしまい、様々な“おまけ”を導入してしまっているようです。しかし、これら“おまけ”のソフトウェアに対しても正規の保守条件や保守費が請求されることのが一般ではないでしょうか。こうしたソフトウェアについては、より注意深く保守条件や保守費を調査したうえで、契約書にも明記しましょう。日本の諺にある「安物買いの銭失い」を忘れないよう注意してください。

交渉点8:M&Aの際には既存契約に統一する

 昨今の日本企業でもM&A(企業の統合・買収)は珍しいことではなくなってきました。M&Aに臨む際は、折角交渉して獲得したソフトウェアライセンスの価格や条件を守るために、既存契約へ統一するのが最も大切です。既存契約へ統一することで、例外のソフトウェアについて、どう処理し交渉するかに対し非常に強い立場になれます。そのためには、M&Aがまだ公になっていない時点から、相手企業のソフトウェアの使用状況やインベントリー(保有資産)、購入条件と実際のインストール状況を適切かつ細部まで把握する必要があります。

交渉点9:監査条件を明記する

 ベンダー監査においても想定外のコスト削減が可能です。法務部門にも関与してもらい、契約前に監査を実施する場合の監査の範囲や、それを正当化する理由、監査条件などを定義するとともに、監査のプロセスと契約期間中に実施する監査の最大回数などについても契約を結びます。計画と実際との間に相違があった場合、その費用を誰が支払うのか、監査争点の何をどのように解決するかなども忘れずに明記しましょう。

交渉点10:ベンダーが行っても良い活動範囲を定める

 ソフトウェアベンダーの延慶担当者がアクセスできる窓口を制限すれば、利用企業は強い交渉のポジションを得られます。ソフトウェア契約は、ベンダーの誰が、どのようにビジネスをするのかを定義するための優れたツールでもあるのです。担当者の役割と適切な窓口を相互に明確にしたうえで最適な条件を確保することで、利用企業はベンダーの営業活動を効果的に管理できるのです。

 契約交渉は継続的なプロセスです。導入すれば終わりではありません。ソフトウェアの利用環境の最適化に向けて、購入したソフトウェアの利用状況を分析し、実際の利用量を把握できれば、調達するライセンスを最小限に抑えながら組織全体に最も効率良く配分できるようになります。

すべては使用実態の正しい把握から

 いかがでしたでしょうか。2回にわたり10個のソフトウェア契約時の交渉点を紹介しました。いずれにおいても、まずはソフトウェア資産のインベントリーを収集し使用状況を正しく把握できていることが出発点です。そのうえで使用していない、あるいは許可していないソフトウェアをネットワークから排除することが、ベンダーによるソフトウェア監査から会社を守ることにつながります。

 ソフトウェア資産管理やソフトウェアライセンスの最適化に向けた多くのツールを活用すれば、利用企業は短期間に成果を上げられるはずです。今回、ご紹介したライセンス契約時の考慮点が、みなさまの継続的なコスト削減とライセンスコンプライアンスの継続的な維持などに少しでもお役に立てば幸いです。

著者プロフィール

Courtney SquiresCourtney Squires

Courtney Squires(スクワィヤーズ・コートニー)
米フレクセラの日本セールスマネジャー。1977 年オーストラリア生まれ。2000 年豪Adelaide 大学卒業と同時に豪Deakin 大学の国際関係学科に入学。国際政治と貿易を専攻し、国家間の政治的関係がビジネスにどのような影響を与えるかなど「国際ビジネス」に興味を持つ。2007年Master of International Relations 終了。2004年~2012年は日本の自動車メーカーを中心に、日本と豪州企業にて営業推進を担当し、マーケティングプロセスや海外調達、M&A、新規事業などを経験。

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