[イベントレポート]

ドイツ銀行、BMWなどがマイクロサービスに取り組む─デジタル化に対する危機感が背景に

Red Hat Summit 2017 レポート(1)

2017年5月15日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

DevOps、マイクロサービス、コンテナ技術といった先端技術が、想像を超えるスピードで浸透しつつある。それも金融機関や製造業、自治体の世界で──。米Red Hatが2017年5月2日~4日に米国ボストンで開催したRed Hat Summit 2017に参加して驚いたことの1つだ。PoC(概念実証)を過ぎて実用段階に入っているのである。ここでは一般企業の取り組みに焦点を当てて報告する。

銀行は規制順守とサービス強化を両立目指す

 本題の事例セッションに話を戻そう。発表した企業の業種で目立ったのが、金融と公共である。どちらかというと保守的で信頼性や安全性を重視する銀行や自治体が、マイクロサービスやコンテナ、そしてOpenShiftを採用していることをアピールすれば、それだけで十分に成熟度を示せると米Red Hatは考えたのかもしれない。少なくとも筆者はそう受け取った。

 まず金融をいくつか紹介しよう。カナダ第2位のトロント・ドミニオン銀行(TD Bank)。米東部に1300の拠点を持つ同行は、融資関連の既存アプリケーションをマイクロサービス化するために、Javaフレームワーク「Apache Camel」、オープンソースのルールエンジン「Drools」、そしてOpenShiftを活用していることを明らかにした。

 「(銀行を取り巻く)規制や法令は頻繁に変わるので、クレジットカードやローン、LOC(利用限度額)、借入者サービスなど金融商品やサービスを適宜、変更する必要がある。しかしモノリシックなアプリケーションでは時間がかかる。これを商品やサービスごとにサービスにしたかった(図3)。管理が容易になるし、安価な環境でも稼働する」(Brad Harrison同行 Senior Managing Engineer)。講演ではクレジットカードのアプリをOpenShiftで稼働させ、一定の閾値を超えると自動でオートスケールさせるデモも実施した。

図3 カナダのTD Bankはモノリシックなアプリケーションをマイクロサービスに移行する
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 1.5兆ユーロの資産を有する世界有数の金融機関であるドイツ銀行は「Our Platform as a Service Journey(PaaSへの旅路)」と題し、CTOのPat Healey氏が講演した。世界各国の金融規制への対応や金融サービスを巡る競争激化といった環境の中で、同行が「テクノロジー企業のように行動し、テクノロジーを活かして消費者の期待に応えられるようにする」のがジャーニーの目標だという(図4)。

図4 ドイツ銀行は「テクノロジー企業のように行動する」
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 というのも外部で経験を積んだHealey氏がドイツ銀に入った2015年時点で、「当行はITの80%をアウトソースし、バージョンも含め45の異なるOSの上で数1000もアプリケーションを運用していた。プロセサコアにして数10万のハードを有していたが、その利用率は1桁台だった」と、厳しい状況だった。これでは戦えないので早速、データ統合、プラットフォームのシンプル化、インフラ(データセンター)の刷新、セキュリティの強化などの変革に取りかかった。

 基本コンセプトは「Everything as a Service(ハード、ソフト、パートナーのすべてをサービスにすること)」(図5)。中核に位置づけたのがマイクロサービス・アーキテクチャとPaaS(OpenShift)である。「例えば、我々は独IBMと英HPという2カ所のデータセンターを使っている。(PaaSにより)それらの違いを意識せずに利用できるようになった」。とはいえ着手して間もないだけに、現時点ではPaaS環境へ移行したのは30%程度。2017年中に40%に高め、将来は85%にする計画だ。

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