日本人はIQや学力において世界的に高い水準にあるものの、デジタル分野では国際競争力が低く、“デジタル敗戦国”と評されることもある。知識習得に偏重し、自己認識や共感力といったEQ(心の知能指数)を育む教育が不足しているのかもしれない。今回は子供の自発的な創造能力を引き出し、非認知能力やEQを伸ばす教育アプローチについて述べてみたい。
日本人は平均的に見て、世界でも能力が高い国民だと推測される。指標の1つである知能指数(IQ)は1位か2位の上位を保ち続けているし、OECDが行っているPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査でも常に上位にランクされている。そして、医療、科学、物理とさまざまな分野でノーベル賞を受賞するような傑出した人材を輩出してきた。
しかしデジタル関連となると話は異なる。グローバル展開できているデジタル事業/サービスは皆無に等しいし、“デジタル敗戦国”と揶揄されたり、大きなデジタル赤字を抱えたりする状況も見受ける。人材に目を転じると、「未踏人材」のような尖った技術者はいるが、世界を視野に入れた大きな構想力と実行力が伴った、ズバ抜けた人材はなかなか生まれてこない。
日本で不足している人材と能力
日本ではテクノロジー人材/組織のインキュベーションの仕組みが弱いことは否めないが、それ以前に何か欠落している環境とか要因とかがあるのではないかと疑わざるをえない。
人材が育つのは、本人の才能も当然ながら、生まれてからの親や教師による教育が大きな影響を与える。日本の教育は総じてすぐれていると言ってよい。文字を読み書きできない非識字者はほとんどいないし、加減乗除の計算にも大抵が困らない。義務教育を通じて、平均的に一定の能力を身につけることはできている。英語をはじめ語学教育はうまくいっていないが、日本語でのコミュニケーションで困ることはほぼない。
文部科学省総合教育政策局が毎年まとめている「学校基本調査」によれば、2023年の高校進学率は98.7%、大学進学率は57.7%と、多くの国民が高等教育を受けている。高等教育では思考力や論理性も問われるが、主体は知識を増やす教育である。多くは記憶に依存する知識の集積によって成績が判断され、偏差値によってレベルが評価されていく。
一方、感情指数とか、心の知能指数とか言われるEQ(Emotional Quotient)を高める教育プロセスは見当たらない。EQは自己認識や自己管理、共感力や対人関係など勘定的な知能であり、認知的な知能を測るIQとは異なる。米国の心理学者/ジャーナリスト、ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)氏はEQを研究し、ビジネス社会での調査を通じて好業績企業のリーダーはEQが高いことを証明した。
そこから仮説を立てるなら、「日本人は、平均的にIQは高いがEQは低い」となるのかもしれない。検証しようと思って調べると、グローバルでEQの追跡調査をしている米Six Secondsのレポートが見つかった。2019年時点で、EQテストを受けた160カ国で日本は最低だったというデータがあった。これ1つで仮説を検証できたとは思わないが、ショッキングなデータではある。
子供教育への思いとチャレンジ
筆者は子供の教育に強い関心があり、日本の教育システムで欠落しているリベラルアーツ教育や非認知能力開発などを目的とした会社「SANTA」を70歳の時に設立した。モデルとしたのはATC21s(Assessment and Teaching of 21st Century Skills)という国際団体が構想した「21世紀型スキル」だった(図1)。脳の発達過程において最も重要と言われ、体験が生きる7歳から10歳に適用できないかと考えたのである。
図1:21世紀型スキルのフレームワーク(出典:ATC21sの原図を基に編集部が作成)拡大画像表示
求める人間像は、「自主性と主体性」「多様性と柔軟性」「グローバルリーダー」「ハイパフォーマー」「ハイコンピテンシー」「タフネス&レジリエンス」で、さらに感性を高められるよう、リベラルアーツを身につけることも重視した。
- リベラルアーツは人間力の基盤となる
- もともとリベラルアーツは「藝術」と訳され「教養」ではなかった
- 藝はアート、術はテクノロジー
- 時代と共に変化していくリベラルアーツの概念
- 変わらぬ倫理、徳、哲学、アートを理解する心と行動
SANTA構想に賛同してくれた仲間といろいろ議論しながら事業モデルを詰めていったが、結果として事業の立ち上げには至らず、忸怩たる思いが残った。
●Next:神秘としか言えない子供の生来の能力、どう伸ばすか?
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