総合診療医が専門診療科の境界を越えて患者を診るように、CIOも事業部門の壁を「越境」する存在であるべきだ。DXやAI活用など全社的な取り組みには、縦割りを排して全体最適の視点でIT戦略を推進することが不可欠である。この「越境」は社内だけでなく、企業や業界を越えるプロフェッショナルなCIOのキャリア形成にもつながっている。
総合病院の総合診療科をテーマにしたTBSのドラマ「19番目のカルテ」が評判を呼んでいる。舞台である「魚虎総合病院」には18の専門診療科がある。そこに19番目の診療科として総合診療科が設けられ、原因がわからずに苦しむ患者さんを救うというストーリーだ。
実際、総合病院は細かく専門の診療科に分かれていて、複数の診療科を渡り歩く患者も少なくない。それだけ複数の疾患を抱える患者が多いということになる。医師の都市部偏在もあり、地方の総合病院では医者が足りない。急性期の患者も優先順位を振り分けるトリアージが必要になっているそうだ。そこで注目されているのが総合診療医である。
見直される総合診療科の価値
総合診療医は幅広い診療領域をカバーする知識や経験があり、言ってみれば“多能工医師”である。原因不明の症状を訴える患者に対して、丁寧に問診しながら医師同士のカンファレンス(検討会)で原因を究明していく頼もしい診療科である。その1つである千葉大学医学部附属病院の総合診療科は評判が高く予約ができないほどで、その活動がテレビの特集番組で報道されたこともある。
実は筆者もかつて総合診療科のお世話になったことがある。夜中に強烈な眩暈で目が覚め、立ち上がることも動くこともできなかった。何が起こったのか見当もつかず、脳機能の障害なども疑った。少し落ち着いた明け方に這々の体で、総合病院の総合診療科に駆け込んだ。症状をいろいろ訊かれたものの、診断は実にスピーディーだった。平衡感覚を司る内耳にある耳石が、何かの拍子で脱落したのが原因である。
戻す処置をしてもらったら、何でもなかったかのように回復した。耳鼻咽喉科の疾患だとは思いもよらなかった。ドラマでもそうだが、総合診療科の医師は他の専門診療科の医師と連携し、必要があれば専門診療科につなぐ。総合診療科の医師はハブのような役割を果たしており、専門分野を越境する医師でもある。
●Next:社内でありながら縦割りが強い事業部門の境界
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