[インタビュー]
“出口戦略”を含めてクラウド戦略を再定義せよ─CIO/IT部門がいま実践すべきこと
2025年12月25日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)
「多くの組織はクラウドコンピューティングの利点を十分に活用できていない」──米ガートナーでクラウドを専門に活動するアナリストの指摘だ。クラウドが普及してずいぶん経つが、いまだにそうなのか? 理由は「クラウド戦略がないか、ないのにあると思い込んでいるから」だという。ここで言うクラウド戦略とはどういったもので、企業にはどんな取り組みが求められるのか。来日したアナリスト、テッド・マクヒュー氏に聞いた。
今、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業の間で議論の中心にあるのは、間違いなく生成AIだろう。業務の効率化や人材不足の緩和、新規事業創出など、その可能性に対する期待は、生成AIの日進月歩の進化も相まって、ますます大きくなっている。一方で、それ以外の要素、例えばITインフラへの関心はどうだろう。軽視するとまではいかないにせよ、関心が低下している可能性はないだろうか。
(もはや2025年が終わろうとしているが)“2025年の崖”に落ちないようレガシーモダナイゼーションを進める企業の多くは、いわゆる“クラウドファースト”を指向する。政府も「クラウド・バイ・デフォルト原則」を推進している。基本の話になるが、クラウドには、綿密なキャパシティプランニングやハードウェアの調達が不要で、必要に応じて柔軟にリソースを増減できる、オンプレミスよりベンダー/サービスを切り替えやすいといった、登場当初から言われてきた利点がある。それらの利点を追求するなら、システムやアプリケーションの第1選択は必然、クラウドとなる。
現在では、コンテナ/マイクロサービスアーキテクチャの採用、DevOpsやCI/CDパイプラインの実装、サーバーレスコンピューティングなど、クラウドネイティブなアプリケーションの開発/運用の取り組みも耳にするようになった。そして、生成AIやAIエージェントをフル活用するための構造化/非構造化データを蓄積する基盤としても、クラウドの価値は高い。
ただし、どんな技術も、活用に関するノウハウを入手したうえで、自社での使い方を十分に検討し、利用状況をマネジメントしないと、得られるはずの利点は得られない。それはクラウドも同じだ。
実際、ガートナージャパンが2025年12月に開催した「ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」に合わせて来日したアナリストは、「多くの組織はクラウドコンピューティングの利点を十分に活用できていない」と指摘する。「クラウド戦略がないか、(ないのに)あると思い込んでいるため」のがその理由だという。
その内実を含めて、CIOやIT部門の責任者が知っておくべきクラウドの”現在地”を、米ガートナー(Gartner)のシニアディレクター アナリスト、テッド・マクヒュー(Ted McHugh)氏(写真1)に聞いた。
写真1:米ガートナー シニア ディレクター アナリストのテッド・マクヒュー氏CIOはクラウドの“出口戦略”を用意するべき
──最近、IT/デジタル技術の話題は生成AI一辺倒です。インフラストラクチャ&オペレーション(I&O、注1)の領域も同様で、生成AIをどう活用するかに関心が集中している気がします。
注1:インフラストラクチャ&オペレーション(I&O)は、ITインフラ/システム運用、およびそれを担う部門・チームのこと。英語圏では広く使われている用語である。ガートナーは、サーバー、ネットワーク、ストレージ、IaaSなどのITの土台=インフラと、それらを運用管理し提供する活動=オペレーションは不可分であるという考えに立っている。
そのとおりです。ガートナーの顧客の中でも、すでにクラウド上に大きなフットプリントを築いている組織やCIOは、生成AIや関連テクノロジーの採用に熱心です。
今、生成AIに関心を持つのは当たり前ですが、CIOやI&O責任者の役割は、ビジネス部門とのパートナーシップや連携をしっかり築きつつ、クラウドの活用を推進することです。そのため、私はクラウドを活用している段階で満足せず、クラウドの戦略を十分に練っておくことを勧めています。
●Next:クラウド戦略を策定する際の誤りのトップ10
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