[木内里美の是正勧告]

最終回:生成AIの活用に徹するために必要なこと、学び続けよう!

2026年1月27日(火)木内 里美(オラン 代表取締役社長)

AIは1956年のダートマス会議から始まり、現在は生成AIが導く新たなブームの渦中にある。日本は巨額投資が必要な基盤開発よりも、Pythonなどの習得を通じた徹底した活用に舵を切り、生産性向上や社会課題解決を目指すべきではないだろうか。個人のアシスタント利用にとどまるのはもったいなく、業務システムへの組み込みをはじめ、生成AIのポテンシャルを引き出してDXにつなげるアプローチはたくさんある。

 AIの研究開発は、1956年に米国で開催されたダートマス会議の研究会から始まったと言われている。世界初のコンピュータ「ENIAC」が公開・稼働した10年後のことである。コンピュータが高性能化していけば、いつか人間のように判断できるようになるに違いないと考えたのである。今年はENIACの公開から80周年を迎える。

 その間、AIブームはほぼ20年ごとに繰り返されてきた。現在は3次ブームの延長にある。指数関数的なコンピュータ性能の向上に加えて、ビックデータ、マシンラーニング、ディープラーニングなどの手法によってコンピュータが自律的に学習する環境が整ってきた。そこに2022年11月、衝撃的なことが起こった。米OpenAIの大規模言語モデル(LLM)「GPT」による、対話型の生成AI(Generative AI)「ChatGPT」(画面1)の公開である。

画面1:2022年11月、ChatGPTの登場に世界が驚いた
拡大画像表示

 従来のAIがデータの分析や識別・予測を得意としたのに対し、ChatGPT以降のAIは自然言語で簡単な指示をするだけで完成度の高い文章や画像、音楽、プログラムなど新しいコンテンツを生成する。その驚き、衝撃からChatGPTの公開後、生成AIが一気に熱気を帯びた。生成AI以降を4次AIブームとする向きもある。

 現在では、主なものだけでもChatGPTのほかに、グーグルの「Gemini」やAnthropicの「Claude」、xAIの「Grok」などが公開されている。「DeepSeek」やアリババの「Qwen」など中国勢も加わって、生成AIはインターネットが公開された時以上に社会変革を担う環境、あるいは基盤と受け止められるようになってきた。

 日本でも、NTTやソフトバンクなどの大手ベンダーやPreferred Networks、Sakana AI、ELYZA(イライザ)といったAI企業が、日本語を多く含むデータで訓練したLLMを作ったり、国産の生成AIを提供したりしている。巨額の投資を必要とするだけに、米国企業に伍してプラットフォーマーになれる可能性はほとんどないだろう。

 であれば、日本は国産の生成AIを開発しつつも、大きな投資を必要としない利用・活用に徹するべきだと思う。徹底した活用によって長年懸案になっている生産性の飛躍的向上や労働力不足、あるいはさまざまな社会課題に対応すればいい。生成AIにはそれらを実現できるポテンシャルがあるが、活用はどれほど進んでいるのか?

期待先行の生成AIは組織で活用できているか?

 ChatGPTが公開されてから、多くの企業や個人が利用を開始した。大手企業は社員のAIリテラシーを高める狙いもあって有料プランを契約し、社内における生成AI利用を推進している。汎用的に使える環境を整備したり、リテラシー教育をしたり、倫理や著作権、情報漏洩防止のルールを定めたり、といったことだ。

 生成AIは日々進化しているので、活用範囲が広がっている。動画を生成したり特定の事柄を調査してくれたりする特化型の生成AIも、たくさん提供されている。制限付きとはいえ、多くは無料で使えることから、新しいものに目がない個人ユーザーがいろいろ試し使いを始めた。実際にどのような使われ方をしているのか、さまざまな立場の人に聞いてみた。おおむね次のような使われ方が多い。

  • 情報検索の深掘り
  • 文章作成、メール文などのパターン化と自動化
  • 企画立案などのアイデア出し
  • 会議録や文章の要約
  • 壁打ち
  • プレゼン資料の作成
  • 画像生成や動画生成
  • 音楽生成
  • Microsoft 365にバンドルされているCopilotの活用など

 言わば賢いアシスタントとしての利用であり、これだけでも会社で個人が日々やっているタスクの多くが削減されて生産性は上がっている。このレベルの活用は標準化しやすいし、eラーニングなどで研修も簡単に行えるのでAI活用の入門としてはいいだろう。しかし、生成AIが持っている潜在的なケイパビリティはこんなものではない。

生成AIを組織で活用するために必要なこととは?

 生成AIを組織として活用するのと、個人がアシスタントとして使うのとでは根本的に異なる。前者は業務に組み込むことであり、効率や生産性を格段に向上できるはずだ。個人のアシスタントを汎用化して自動処理するAIエージェントも、組織で活用する第一歩となるだろう。代表的な事例を挙げると次のようなものがある。

  1. 社内データ基盤に生成AIを組み込み、社内ナレッジを容易に検索可能にする。データの分析や人材の能力に応じた抽出や予測などをサポートする。
  2. AIにWebサイトを巡回させて競合他社に関する情報や経営に関する市場情報を毎日定刻に収集し、前日との差分を抽出して要約し、レポートとして自動的にチャットやルールで送信する。
  3. オウンドメディアとして発信する社外向けブログを、AIが要約したり関連する画像を生成したりした上で、音声付き動画にしてSNSで発信する。
  4. 既存システムとAPI連携させて自動処理する。例えば不揃いな請求書の画像をAIが読み取り、会計ソフトに入力する。
  5. CRMと連携させて、コールセンター業務を自動化する。受注業務なら在庫システムから在庫を確認し、返信案を自動作成して送信する。クレーム処理の場合は担当者にエスカレーションしてアラートで内容を知らせる。
  6. 要件を元にプログラムを生成する。エラー処理などシステム運用をある程度自動化する。

 これらは先進的な企業ならすでに取り組んでいるはずだが、多くの企業ではこれからだろう。そして今年は組織における活用がブームになりそうな予感があるが、しかしハードルもある。ノーコードツールなどを利用して生成AIを活用する程度なら不要だが、それを超えて生成AIを業務に組み込むためにはいくつかの学習が必須となることだ。

 AIモデルと企業システムやデータを接続する標準規格のMCP(Model Context Protocol)や、AI活用のためのPython言語(図1)の習得がそれである。このうちPythonはインタプリタ型の言語なので実行速度などの点で基幹システムなどの開発には向かないが、データ分析やAI分野に広く使われてきた。オープンソースなので無料で使うことができ、ライブラリが充実している利点がある。

図1:Pythonのリリース計画(出典:Python公式サイト)
拡大画像表示

 筆者自身、最新版のPython 3.14をMacBookにインストールして弄ってみた。IDLE(開発学習環境)を起動するとシェルウィンドウが開く。>>>にプロンプトを書いていくことでプログラミングができる。プログラムはインデント(字下げ)で処理のかたまりを書いていくので、読みやすく分かりやすい(画面2)。

 この画面は自分の誕生日が何曜日だったかを知るために、生年月のカレンダーモジュールを呼び出して表示させてみたものだ。瞬時に月曜日だと分かった。Javaなどに比べれば格段に取り組みやすく、基礎をしっかり学べば簡単なプログラムは書けそうである。

画面2:Pythonのプログラム例
拡大画像表示

 Pythonの習得を推奨するのは、生成AIの開発や操作においてPythonが標準的な共通言語だからである。AIエージェントを作るにしても、データの分析にしても、API連携にしても、生成AIと相性のよいPythonで処理することができる。開発ベンダーも業務に生成AIを組み込むためのサービスを準備したり、提供したりし始めているが、Pythonを学ぶことによってベンダーに丸投げせずに議論することができ、主体性を維持することが可能になる。

●Next:AIの活用を基礎から学べる6カ月研修、そして最後に──

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
バックナンバー
木内里美の是正勧告一覧へ
関連キーワード

生成AI / ChatGPT / 大規模言語モデル / 教育プログラム / Python / OpenAI / Google / Gemini / GPT / Microsoft Copilot

関連記事

トピックス

[Sponsored]

最終回:生成AIの活用に徹するために必要なこと、学び続けよう!AIは1956年のダートマス会議から始まり、現在は生成AIが導く新たなブームの渦中にある。日本は巨額投資が必要な基盤開発よりも、Pythonなどの習得を通じた徹底した活用に舵を切り、生産性向上や社会課題解決を目指すべきではないだろうか。個人のアシスタント利用にとどまるのはもったいなく、業務システムへの組み込みをはじめ、生成AIのポテンシャルを引き出してDXにつなげるアプローチはたくさんある。

PAGE TOP