中期システム化計画を成功に導く10の実践ポイント─変化の激しい時代にIT部門が持つべき視点とは?
2026年3月13日(金)CIO Lounge
日本を代表する百戦錬磨のCIO/ITリーダー達が、一線を退いてもなお経営とITのあるべき姿に思いを馳せ、現役の経営陣や情報システム部門の悩み事を聞き、ディスカッションし、アドバイスを贈る──「CIO Lounge」はそんな腕利きの諸氏が集まるコミュニティである。本連載では、「企業の経営者とCIO/情報システム部門の架け橋」、そして「ユーザー企業とベンダー企業の架け橋」となる知見・助言をリレーコラム形式でお届けする。今回は、CIO Lounge正会員メンバーの横道伸二氏からのメッセージである。

クラウド、AI、セキュリティ脅威、働き方改革、開発手法の多様化が進む中、IT環境は短期間で大きく変化しています。そのような環境だからこそ、「3〜5年の中期システム化計画に意味があるのか」と感じてしまう方も少なくありません。しかし、変化が激しいからこそ、中期計画は企業の進むべき方向を示す“羅針盤”としての役割を持ち続けています。
本稿では、中期システム化計画を策定するうえで欠かせない10つの視点を、実務の現場で培ってきた経験をもとに紹介します。
1.経営との信頼関係を築くことが計画の前提条件
中期システム化計画は、単発の議論で決まるものではなく、人材・体制・予算といった重要な要素も日頃の信頼の積み重ねを通じて初めて認められていくものです。IT部門から見て「経営はシステムを理解していない」と感じる場面は多いものですが、それは経営陣への説明努力が不足している場合も少なくありません。
誤りのない運用、障害発生時の迅速な対応、再発防止策の徹底に加え、システムの開発や導入といった本来業務を着実に遂行することが重要です。こうした“当たり前の積み重ね”が、5〜10年かけて経営との信頼関係を育てていきます。そして、その信頼を土台にしながら、経営の論理で語り、企業の方向性と整合したIT投資であることを示していく姿勢が重要です。
2.全社員が満足するシステムは存在しないと理解する
システム化計画で最も陥りやすいのが、「全社員の要望を均等に取り入れようとする」姿勢です。多様な立場の社員から要望を集めると、相反する意見や過剰な要求が必ず出てきます。それらすべての要望を平均点に寄せるように“10点中5点”に丸めてしまうと、誰も満足しないシステムが完成し、長期的な不満の温床になります。
一定規模のシステムでは、全社員が満足するシステムは実現できません。重要なのは、コア業務に集中してシステムを構築し、周辺機能は段階的に外付けで整備するという割り切りです。これにより、コストと満足度のバランスを最適化できます。
3.ユーザー要望は御用聞きではなく“編集”する
ユーザー要望の収集は重要ですが、単に羅列するだけでは計画にはなりません。IT部門は「どのようなシステムを作るべきか」という自らの意見を持ち、それに基づいてユーザーと議論しながら要望を編集し、優先順位をつけていく必要があります。
言われたことをそのまま受け取る“御用聞き”のような姿勢で策定した計画は膨張し、実現性が失われます。IT部門は、企業全体の最適化を見据えた“編集者”として振る舞うことが求められます。
4.老朽化システムの更改は“攻めの投資”と捉える
老朽化したシステムの更改は、単なる維持ではなく、ビジネススピードを高める絶好の機会です。従来の投資効果は効率化や品質改善が中心でしたが、これからは拡張性とスピードが最重要テーマになります。
老朽化システムの改善は、新規事業の立ち上げや業務改革を柔軟かつ迅速に実行できるビジネス基盤をつくる“攻めの投資”と捉えるべきです。
5.セキュリティは「侵害発生を前提とした備え」を重視する
セキュリティ投資は永遠の悩みどころであり、中期システム化計画でも難題の1つです。慎重になりすぎると、クラウド活用をはじめとして、データ利活用や業務改革といった取り組みを過度に萎縮させ、ビジネスのアジリティや柔軟性を損ないます。一方で、投資を怠れば重大なビジネスリスクを抱えることになります。
重要なのは、セキュリティインシデントは完全には防げないという前提で備えることです。セキュリティ侵害発生後の復旧は「気合と根性」ではどうにもなりません。サプライチェーン全体を見据え、海外クラウドの法規制も踏まえた影響分析やセキュリティ訓練、BCP対策が不可欠です。加えて、クラウドを前提としつつも、障害発生時にはオンプレミスが頼りになる場面もあることを意識しておく必要があります。
●Next:データ活用、システムパートナーとの関係、IT要員の役割──中期システム化計画を成功に導くために、どうあるべきか?
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