「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、SCET Laboratory 菅沼重幸氏によるオピニオンである。

このコラムの執筆を依頼された時、CIO賢人倶楽部 代表の木内里美さんがIT Leadersにて月次連載されてきた「是正勧告」が2026年1月27日に最終回となったことを聞きました。2008年から17年間、合計209回の連載には改めて驚きましたが、それはともかく「是正勧告」最終回はやはりAIの話題で締めくくられています(関連記事:最終回:生成AIの活用に徹するために必要なこと、学び続けよう!)。
さて読者は「SaaSの死」という議論をご存じでしょうか? これを含めて、AI時代に求められるIT部門の役割について考察したいと思います。
誰もが可能性を感じるAIの現在地
木内さんが同コラムで指摘されたように、AIの研究はコンピュータが誕生して間もない1950年代から連綿と続いています。数値計算や論理演算といった知的な処理を行えるコンピュータを使って、人間の能力に匹敵する、あるいはそれを超える知能を人工的に実現することは研究者や技術者の夢であり続けてきたと思います。
現在のAIブームは20年ごとのサイクルとして4回目になります。最近40年ほどの技術的な流れとしては、エキスパートシステムから機械学習(ML)、深層学習(DL)を経て、自然言語を操る生成AIへと進化してきています。生成AIにより、かつて人間だけの領域であった認知、推論、意思決定、創造といった高度な知的作業を、コンピュータが担えるようになったのはご存じの通りです。
そんな生成AIの仕組みは実際にはとても複雑ですが、裏側の仕組みを理解しなかったとしても生成AI側が寄り添ってくれます。簡単な指示で適切な推論を行ってくれますし、手持ちのデータや情報を与えると、専門家であるかのように解釈、分析してくれます。今日では誰もが生成AIの可能性に大きな期待を寄せています。
一方、自ら生成AIのモデルを作るとなると話は違います。データの質と量、膨大な計算能力の確保はもちろん、適応領域の開発センスも重要です。学習については先行投資が求められますし、単にコンピューティングリソースが大量に必要となるのではなく、それを支える電力を含むエネルギー問題にも対処する必要があります。
データに関しても品質が高くなければ、データ自体のバイアスにより推論は正しく行われません。いわゆるハルシネーション問題です。データの解像度も高くする必要があります。非常に膨大な量で、かつ高い品質のデータを求められることになります。相当の投資余力と技術力がないと、モデルを構築することは困難でしょう。だからといって知識集合体としてのモデルを他国の企業に委ねて、我々は利用するだけでいいのでしょうか。ここで深堀りはしませんが、筆者としては疑問があります。
●Next:AIエージェントによる変革と「SaaSの死」、IT部門はこの変化をどう見るべきか?
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