生成AI時代にCIOが果たすべき役割─「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」を踏まえて
2025年12月11日(木)CIO賢人倶楽部
「CIO賢人倶楽部」は、企業における情報システム/IT部門の役割となすべき課題解決に向けて、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)同士の意見交換や知見共有を促し支援するユーザーコミュニティである。IT Leadersはその趣旨に賛同し、オブザーバーとして参加している。本連載では、同倶楽部で発信しているメンバーのリレーコラムを転載してお届けしている。今回は、PwCコンサルティング 執行役員 パートナー 神野真人氏からのオピニオンである。

近年、生成AIの進化は企業経営に大きなインパクトを与えています。だれもが生成AIを活用し、課題解決や事業戦略策定のための情報を容易に取得できる時代となりました。このように情報格差がなくなっていく中で、CIO(Chief Information Officer)には、従来以上に「テクノロジードリブンでの事業貢献」が求められています。
生成AIは企業の在り方を変化させるポテンシャルを持つ
なぜ、そうなのでしょうか? PwCコンサルティングが2025年6月に発表した「生成AIの将来技術動向」は、今後5年・10年を見据えて、「ベースモデル(LLM)のさらなる向上」「デジタル空間:AIエージェントの普及」「フィジカル空間:フィジカルAIの誕生」という3つの潮流を分析し、それらが相まって企業の在り方の変化を引き起こすことを展望しています。生成AIは、それだけのポテンシャルを有するテクノロジーだからです(図1)。
図1:AI時代の3つの潮流(出典:PwCコンサルティング)拡大画像表示
では、日本企業の取り組みはどうなのでしょう。PwC Japanグループが実施した「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」によると、日本企業の生成AI導入率は5カ国の平均に近い56%と、半数を超えました。しかし「期待を上回る効果」を実感している企業は米国や英国のわずか4分の1、ドイツや中国の半分に留まります。導入率こそ他国と同等ながら、効果創出の面で日本は依然として大きく水をあけられていることが明らかになりました。
高い効果を上げている企業は、いずれの国でも生成AIを単なる効率化だけではなく、業務や事業構造を改革する手段と捉え、新たなガバナンスを整備して業務プロセスへ本格的に組み込んだり、従業員への価値還元に取り組んだりしています。日本では、このような先進的な取り組みを行っている企業の割合がまだ少なく、そのことが効果を実感できるかどうかの差となって表れていると考えられます。
●Next:生成AIで効果を上げる企業になるために、CIOはどうあるべきか
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