丸投げから脱却し、攻めのAI/デジタル投資へ─「REWIRED=再配線」の設計図:第1回
2026年4月2日(木)片山 博順(マッキンゼー・デジタル パートナー)
デジタルトランスフォーメーション(DX)が重要テーマとなって久しいが、マッキンゼーの調査によれば、回答企業の84%でDXの財務的な成果が出ていないのが現実だ。その大きな要因は、DXを単なる「ツール導入」や「業務効率化」と捉え、ビジネスモデルそのものを再構築する「企業変革」へと踏み込めていないことにある。本連載では、世界200社以上のプロジェクト実績から導き出されたマッキンゼーの企業変革アプローチ「REWIRED(再配線)」をベースに、日本企業がAI時代を勝ち抜くための実践的な知見を紹介していく。第1回となる今回は、デジタル/AIによる変革を成功に導くために不可欠な「6つの領域」の全体像と、日本企業が直面する課題を紐解く。

日本において、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が多くの企業の経営者にとって重要テーマになってから久しい。また、近年は生成AIやAIエージェントの登場により、AI時代の企業・事業のあり方の議論が出ない日はない。これらのテクノロジーがビジネスのあり方を大きく変えている。
マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)は、グローバルの戦略コンサルティングファームとして、長年にわたり各国企業のトップマネジメントが抱える経営課題の解決を支援している。今、そんな当社自身の仕事のあり方も、デジタルやAIをはじめとするテクノロジーの進化によって大きく変化している。
この連載では、マッキンゼーがグローバルの知見と日本企業との協働を通じて得た、デジタル/AIを駆使した事業変革のアプローチやその成功事例、また、マッキンゼー自身の変化についてお伝えしていきたい。
なぜ今「再配線」なのか─DX失敗の根因とREWIREDが示す処方箋
2024年、マッキンゼーは『REWIRED』という書籍を上梓した。本書は、世界200社以上のプロジェクト実績からベストプラクティスを抽出し、デジタルやAIによる企業変革を成功させるための方法論を体系化したものだ(図1)。
図1:書籍『REWIRED』の概要(出典:マッキンゼー・アンド・カンパニー)拡大画像表示
本書を世に出した目的は明確だ。それは、デジタル/AIを単なるツール導入にとどめず、経営ビジョンの刷新、事業ポートフォリオの再構築、組織横断の変革アーキテクチャとして位置づけ、企業全体の本質的な変革に導くためである。そして、この書籍に込めたビジョンやアプローチを、特に日本企業のリーダーの皆さんに届けたいという思いがある。日本企業に必要な「REWIRED=再配線」が今、まさに求められているからだ。
昨今、話題に上らない日はない生成AIやAIエージェントだが、これらは単なる技術トレンドではない。経営の本質、すなわち「誰が意思決定し、何にリスクを取り、どう変革を進めるのか」を根本から問い直す、経営上の転換点である。業務効率化という「改善」ではなく、ビジネスモデルそのものを再構築する「企業変革」へと歩を進める好機なのである。経営者、そして経営者をテクノロジーで支えるリーダーに向けて、この連載を通じて、REWIREDの戦略と実践を多く紹介していきたい。
企業変革の成否を左右する「6つの領域」の重要な観点
私たちは、デジタルやAIによる企業変革を実現するために、6つの領域での同時かつ統合的なアプローチが不可欠であると確信している。これは単なる理論ではなく、世界中の現場での実績に裏打ちされた実行の知見であり、いわば変革の成功率を大幅に高める「再現性のある設計図」である。
①DXを「IT計画」から「成長戦略」へ:トップが握るべき戦略ロードマップ
デジタルやAIによる企業変革は一過性のプロジェクトではなく、終わりのないジャーニー(旅路)である。長期DXビジョンの下でトップが関与し、事業ポートフォリオを見直し、KPIとマイルストーンで全体をマネジメントする長期的な視点が重要となる。
成功企業ほど、この戦略ロードマップを経営議論の中核に据えており、単なるIT計画ではなく、成長戦略そのものとして描いている。生成AIによって拡大する経営判断のスピード格差に対し、日本企業が勝負を挑むならば、トップ自らがこの設計図を握るべきである(図2)。
図2:DXに向けたロードマップとドメインアプローチ(出典:マッキンゼー・アンド・カンパニー)拡大画像表示
●Next:「変化に強い企業体質」が次の10年を左右する
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