[ユーザー事例]
レガシーな運用管理とIT人材不足を克服。JALのシステム運用高度化プロジェクト「JUMP」の舞台裏
2026年5月18日(月)神 幸葉(IT Leaders編集部)
JALグループが、PagerDutyを核とした運用高度化プロジェクト「JUMP」を推進し、システム運用のモダナイゼーションを進めている。2026年4月16日にPagerDutyが開催した「PagerDuty on Tour Tokyo 2026」のセッションに、JALデジタル システムサービス部 運用サービスグループ ユニット長の 髙石頼聡氏が登壇。「JALのシステム運用が「JUMP」する! ~PagerDutyの導入と全社展開の挑戦~」と題して、システム構築時の試行錯誤や、全社展開に向けた課題と対策などを語った。
レガシー運用からの脱却と「JUMP」始動
JALのサービスは、航空券の予約や発券、運航管理、航空機の整備支援などを担う、数百にわたる多種多様なシステムが支えている。JALグループのIT中核会社であるJALデジタルでは、約1000人のエンジニアがこれらのシステム開発や運用保守などを行っている。
しかし、技術の急速な進化に伴い、システム構成は日々複雑になり、運用の現場は非常に大きな壁に直面している。JALデジタル システムサービス部 運用サービスグループ ユニット長の髙石頼聡氏(写真1)は次のように説明した。
「ひとたびシステムに不具合が発生すると、復旧までの間、飛行機の遅延・欠航、航空券販売の機会損失、安心安全な運航への支障といった問題が発生します。これは航空会社にとって非常に大きなダメージです」
写真1:JALデジタル システムサービス部 運用サービスグループ ユニット長 髙石頼聡氏ITシステムの高度化と複雑化が進む中で、従来のJALグループの運用監視システムはオンプレミスに特化しており、パブリッククラウドやSaaSの監視が不十分だった。その結果、システム不具合時の原因特定に時間がかかっていた。さらに、システム不具合の対応や運用作業に人的リソースが割かれており、作業効率化にリソースが割けないという悪循環に陥っていた(図1)。
図1:JALのシステム運用が抱える課題(出典:JALデジタル)拡大画像表示
「これらの課題を抱えたままではJALのサービスそのものを支え続けることができなくなると考え、システム運用を根本から変えるモダナイゼーションを決断しました」(髙石氏)。その旗印になるのが、システム運用高度化プロジェクト「JUMP(JAL UNYO Modernization Platform)」だ。髙石氏はプロジェクト発足時、JALに出向しており、JUMPプロジェクトマネージャーとして変革を牽引した。
自動化基盤の構築でインシデント対応を大幅に短縮
上述の課題解消に向けて、JUMPは「システム状態の可視化」「自動化の普及」「無駄のない運用プロセス」の3つのアプローチを取った。これらを具体的に実現するのが、「Datadog」および「Amazon CloudWatch」による監視、「PagerDuty」によるインシデント対応自動化、「ServiceNow」を使ったITサービス管理だ(図2)。
図2:JUMPを構成するソリューション(出典:JALデジタル)拡大画像表示
JUMPでは、監視管理対象が発信したアラートをDatadog、Amazon CloudWatchが検知し、PagerDutyへ連携する(図3)。PagerDutyはアラート内容をシステム担当に通知、または事前に定義された自動化プロセスを実行する形で障害対応を開始する。インシデント解決後はPagerDutyからServiceNowにインシデント情報を連携。蓄積した情報は今後、AIによるデータ分析など活用する計画だ。
図3:JUMPの全体像(出典:JALデジタル)拡大画像表示
現時点でJUMPを導入したシステムは10程度だが、すでに効果が現れ始めている。1つ目は復旧担当者への通知時間の短縮だ。インシデント発生から復旧作業開始までの時間を短縮し、年間約450時間の削減につながっている。
インシデント数そのものの削減効果も出ている。Datadog、Amazon CloudWatchが検知しPagerDutyに連携されたイベント数は、ある1カ月で456件あったが、PagerDutyが持つトリアージ機能(重複削除や条件フィルタリングなど)を通すことで、126件まで減少したという。
●Next:効果実感の一方で見えてきた課題と解決アプローチで目指す”JUMP”
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