地図・位置情報サービスを手がけるオランダのHERE Technologiesは2026年5月19日、AI向け位置情報サービス「HERE Location Reasoning」の提供を始めたと発表した。AIが現実世界の位置情報をもとに確定的な回答を出せるようにする。現在はまだ一部のユーザーとパートナー向けに提供しており、今後、提供対象を広げる。
オランダHERE Technologiesの「HERE Location Reasoning」は、生成AIを補完する位置情報サービスである。AIエージェント実行時に外部ツールとして呼び出して使うことで、地図や交通情報に基づいて確定的な(同じ入力には常に同じ結果が得られる)判断を下せるようになる。
大規模言語モデル(LLM)は確率に基づいて次の単語を予測する仕組みのため、距離や経路といった空間的な計算は苦手である。AIエージェントが現実世界で業務をこなす上で、ここが弱点となっていた。
例えば、「公園から最も近いパン屋」を聞くとテキスト情報をもとに店舗を提示するが、これが最短とは限らない(画面1)。同社は「LLMに空間計算を任せるのは、地図とコンパスではなく旅行ブログを頼りに街を歩くようなものだ」と指摘する。
画面1:「公園から最も近いパン屋」をLLMに問い合わせた際の例。テキスト情報をもとに店舗を提示するが、道路網上で必ずしも最短ではないHERE Location Reasoningを組み合わせることで、空間計算を経た正確な回答が得られる(出典:オランダHERE Technologies)拡大画像表示
HERE Location Reasoningは、こうした位置情報に関する問い合わせに対して空間的な計算を実施し、結果を返す。あらかじめ位置情報のコンテキストをLLMに付与する「グラウンディング」型の手法と異なり、空間計算そのものを実行する。これにより、確率的な回答ではなく、同じ入力に対して常に一貫した結果を返す。
具体的な用途として同社は、「走行中のルート沿いで5分以内に立ち寄れる電気自動車の充電器を探す」ケースや、「リアルタイムの渋滞状況を踏まえ、営業時間内に薬局に到達できるかを判定する」ケースなどを想定している。また、フィールドサービスにおける技術者の最適配置、運行管理でのルート最適化といった業務にも応用できる。
サービスの基盤となるのは、200以上の国と地域にわたって6800万km以上の道路を網羅する地図データである。道路形状や接続性、交通パターン、道路規制などの属性データを備えている。継続的に更新しており、現実世界を忠実に反映したデータを維持しているという。同社の地図は世界の自動車メーカーや物流企業など2億3800万台超の車両が利用している。
同社プロダクトマネジメント担当シニア・バイス・プレジデントのクリストファー・ハンドリー氏は、「AIは世界を描写することはできても、現実の道路や交通がどう振る舞うかを正確に計算することはできない」と指摘する。AIが苦手な空間計算を新サービスが肩代わりすることで、AIエージェントが現実世界で迅速かつ的確に判断・行動できるようになるとしている。
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