データマネジメント関連ツールを開発・販売する米Informatica(インフォマティカ)は2017年5月15日から18日(現地時間)、米サンフランシスコで年次カンファレ ンス「Informatica World 2017」を開催している。5月16日の基調講演では、デジタル変革におけるデータの重要性を強調すると同時に、それを支援する中核製品群「Intelligent Data Platform」へのAIエンジンの投入を発表した。合わせて、企業ロゴやブランドカラーを一新し、データマネジメントそのものから、それによって現場のデータ活用を支援するITベンダーとしての位置付けを訴えた。
「デジタルトランスフォーメーションの重要な基盤はデータだ」——。米InformaticaのCEO、Anil Chakravarthy(アニル・チャクラヴァーシー)氏は基調講演の冒頭、改めてデータの重要性を訴えた(写真1)。
データマネジメントのための仕組みを提供する同社が、データの重要性を説くのは当然といえば当然だが、これまでのInformatica Worldでのメッセージにも増して、テクノロジーによるディスラプション(破壊)が起こっていることを強調したうえで、「ディスラプションは、あらゆる業種で起こっており、その対抗策としてのデジタルトランスフォーメーションへの取り組みは重要性をますばかりだ」(同)という。
背景にあるのは、同社が「Data3.0」と呼ぶ、データ活用環境の変化。2020年には、年間のデータセンターでのデータトラフィック量は15.3ゼッタバイトになり、その92%はクラウドとのトラフィック、データを活用するビジネスユーザー数は3億2500万人といった数字を挙げながら、改めてデータマネジメントのための基盤(プラットフォーム)の必要性を指摘する。「データベースの種類やスキーマ、データタイプに加え、誰が、どんなアプリケーションを使ってデータを利用しているのかなどを把握する必要がある。だが、それはサイロ化したシステム環境では非常に困難な課題」(Chakravarthy氏)になるからだ。
AIでデータの管理から利用までを容易に
その課題解決に向け、Informaticaが、ここ数年取り組んできたのが、データ活用のためのアプリケーション構築基盤「Intelligent Data Platform(IDP)」である(関連記事『データ連係ツールからデータ基盤へ、「Intelligent Data Platform」を発表』。基本コンセプトは、企業が持つデータのメタデータとデータの利用ログを一元管理することで、セキュリティやガバナンスを考慮しながらも、利用者が求めるデータを、より最適な形で必要な時に提供できるようにすることだ。
今回、このIDPにAI(人工知能)エンジン「CLAIRE(クレア)」を搭載。メタデータと利用ログを対象にDeep Learning(深層学習)を適用することで、データの管理から利用までを、より容易にする。例えば、一度タグ付けしたデータを基準に,同じ意味を持つデータ項目を探し出したり、データの利用状況に応じて参照すべきデータの“お薦め”を星の数で表示したり、あるいは大量のログデータにおけるデータ構造を導き出したり、といったことが可能になる。
CPO(最高製品責任者)のAmit Walia(アミット・ワリア)氏は、CLAIREを「Clairvoyantだ」と紹介した(写真2)。Clairvoyantとは、天才的といった意味だが、Walia氏は「これから起こる出来事を察する能力があること」と説明している。
そのCLAIREの効果が期待できるアプリケーションの1つが、データカタログだ。社内外に散在するデータ群に対し、ビジネス部門の利用者などがセルフサービス型で利用できるように、利用可能なデータの一覧などを提供する仕組みである。データをマネジメントしているIT部門などが、利用部門からの要望を聞いてから動くのではなく、利用可能なデータを常に提案するためのツールだともいえる。ここにAIを適用すれば、管理のための作業が軽減されるほか、利用されればされるほど、より利用者ニーズに合致したカタログの作成が期待できる。
データカタログについて、ある日本企業のIT部門長は、「多様なデータが集まるようになり、利用部門の分析ニーズが高まってきている。ただ、やみくもに公開するわけにはいかないので、データガバナンスの実現においても注目している」と話す。Informaticaジャパンの担当者は、「同様の考え方から、データカタログへの関心が日本でも高まっている」という。