[イベントレポート]

変革の基盤はデータ、AIで現場のデータ活用を支援【Informatica World 2017】

2017年5月17日(水)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

データマネジメント関連ツールを開発・販売する米Informatica(インフォマティカ)は2017年5月15日から18日(現地時間)、米サンフランシスコで年次カンファレ ンス「Informatica World 2017」を開催している。5月16日の基調講演では、デジタル変革におけるデータの重要性を強調すると同時に、それを支援する中核製品群「Intelligent Data Platform」へのAIエンジンの投入を発表した。合わせて、企業ロゴやブランドカラーを一新し、データマネジメントそのものから、それによって現場のデータ活用を支援するITベンダーとしての位置付けを訴えた。

IDPの内部構成も見直し

 IDPに機械学習の機能を持たせることは、IDPの発表当時から宣言されてきた。それが今回、CLAIREという名称をつけて発表した背景は、いくつか考えられる。データに対するAI適用がアプリケーション領域からも起こっていること、Informaticaとしてのクラウドやビッグデータへの対応が進展したこと、ハイブリッド環境でのデータ分析の課題が明らかになってきたことなどだ。

 実際、今回のイベントではIDPは4つの層からなる基盤として説明した。アプリケーションの側から見て、(1)Enterprise Unified Metadata Intelligence、(2)Monitor and Manage、(3)Compute、(4)Connectivityである(図1)。

図1:4つの層からなるIDPのアーキテクチャー図1:4つの層からなるIDPのアーキテクチャー
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 これら4層のうち(1)のEnterprise Unified Metadata IntelligenceがCLAIREになる。(2)Monitor and Manageは、CLAIREの機能を使ったデータ環境全体の可視化、(3)Computeは、分散するデータを統合・分析するための環境、すなわちHadoopやSPARKといったビッグデータのハンドリング、(4)Connectivityは従来製品を含めた種々のデータ連携機能になる。これまでのIDPでは、データの仮想化といった概念が含まれていたが、それは姿を消している。クラウドの利用が進み、データの移動がクラウド内での実行中心になってきたことを反映しているとみられる。

折り紙のように変化することで新たなビジネスを作り出す

図2:Informaticaの新しい企業ロゴ図2:Informaticaの新しい企業ロゴ
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 Informatica World 2017においてInformaticaは、新たな企業ロゴやブランドカラーを投入した。従来の赤、黄、青の3色による丸、四角、三角のロゴに対し、新ロゴは折り紙の鶴を模したものでブランドカラーはオレンジとした(図2)。 折り鶴に込められた意味は、折る作業を繰り返すことで一枚の紙が様々に形を変えながら最終形になるように、「データを活用することで、既存の仕組みを破壊(Disruption)し、新たなビジネスモデルを作り出すこと」のようだ。

 CMO(最高マーケティング責任者)のSally Jenkins(サリー・ジェンキンス)氏は、米電気自動車メーカーのテスラを例に挙げ、「同社は、自動車から得られるデータを元に、自動運転などを実現するソフトウェア会社になり、さらには車に電力を供給するエネルギー企業になった。これからの企業に必要なのは、オペレーショナル(運用)ではなく、トランスフォーメーショナル(変化できること)だ」と説明する(写真3)。

写真3:変化の重要性を指摘するCMO(最高マーケティング責任者)のSally Jenkins(サリー・ジェンキンス)氏写真3:変化の重要性を指摘するCMO(最高マーケティング責任者)のSally Jenkins(サリー・ジェンキンス)氏

 当然、Informaticaのイメージ一新の狙いもある。2015年4月の株式の非公開化、2016年1月の経営陣一新、そしてIDPなどのアーキテクチャー刷新により、創業当時から続くETL(データの抽出・変換・挿入)ツールベンダーのイメージから、データマネジメント、さらにはデータ活用のためのプラットフォーム提供者のイメージへの転換だ。CxOが異口同音にデジタルトランスフォーメーションの必要性を訴え、そこでのデータマネジメント基盤の重要性を強調するのもの、そのためだ。CMOのJenkins氏は、会場の聴講者に向かって「みなさんこそが、データ駆動型の破壊者だ。そしてInformaticaは、その行動を支えていく」と声を大にする。

 IoTやAIといったテクノロジーの活用事例が増える中で、これからのビジネスの争点がデータにあることの認識も高まっている。ITベンダー各社もデータの管理・活用における優位性を、それぞれに立ち位置から強調している。

 そうした中でInformaticaのメッセージは、マスターデータマネジメント(MDM)やデータ品質の確保などデータマネジメントの根本部分を含みながらも、利用部門にとってのメリットを前面に押し出すものだ。MDMやデータ品質の確保は、その必要性は分かっていても、単独のプロジェクトとしてはなかなかROI(投資対効果)を示せず実行は難しい。上述したデータカタログの実現などのを契機にデータ基盤の整備に乗り出すのは1つの方策だろう。同社の新ロゴではないが、最初の一折りを始めないことには“鶴”は完成しないのだから。

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