[技術解説]
1100万人が使う単発バイトアプリ「タイミー」、急成長を支えたRuby on Rails
2025年7月30日(水)Rubyアソシエーション
日本発のオープンソースのプログラミング言語「Ruby」と、その開発フレームワーク「Ruby on Rails」。これらを用いて開発されたアプリケーションやサービスは数多あるが、その中から、特にすぐれたものを表彰するのが年次アワードプログラム「Ruby bizグランプリ」だ。本稿ではRuby biz Grand prix 2024の大賞に選ばれた2つのサービスのうち、スポットワーク(単発アルバイト)のマッチングサービス「タイミー」(開発:タイミー)を紹介する。
※本稿の内容は取材時点(2025年2月)の情報に基づいています。サービスの利用者数については同年4月時点の情報を掲載しています。
Rubyのすぐれたビジネス事例を表彰するアワード
Rubyは、生産性を高めるフレームワークRuby on Railsと共に、世界の多くの開発現場で使われているオープンソースのプログラミング言語である。その普及を促進するために2015年に始まったのが「Ruby bizグランプリ」という年次アワードプログラムだ。Rubyの開発者まつもとゆきひろ氏の活動拠点である島根県が中心になって組織したRuby bizグランプリ実行委員会が主催し、グランプリの審査委員長をまつもと氏自身が務めている。
アワード名のとおり、Rubyを使って開発されたビジネス用途のシステムやサービスの中から、新規性、独創性、市場性、将来性に富み、今後継続的に発展が期待できる事例を表彰する。
前回のRuby bizグランプリ2023では、ピクシブが開発したイラスト、マンガ、小説の投稿プラットフォーム「pixiv」およびpixiv関連サービス(関連記事:累計1億人が利用する「pixiv」のタイムリーな開発を支えるRuby on Rails─ピクシブ)と、ウーオが開発した水産流通プラットフォーム「UUUO(ウーオ)」(関連記事:魚市場から生まれた水産流通プラットフォーム「UUUO」、Rubyで迅速開発─ウーオ)が大賞を受賞している(関連記事:2018~2023年のRuby bizグランプリ大賞を紹介した記事)。
Ruby bizグランプリ2024大賞
スポットワークマッチングサービス「タイミー」
開発概要:スポットワーク(単発アルバイト)のマッチングサービス
開発企業:タイミーhttps://corp.timee.co.jp/
開発した主なシステム:タイミー
利用技術:
・Ruby 3.3系
・Ruby on Rails 7.1系、RSpec
・データストア:MySQL 8.0系、Redis
・ツール: Docker、OpenAPI、CircleCI、GitHub Actions、AWS、Terraform、Datadog、Sentry
・AWS(ECS Fargate, Aurora, RDS, S3, ElastiCache, CloudFront, その他)Elasticsearch(AWS Marketplace)を利用
・CircleCI, GitHub Actions, Dependabot
ニーズおよび解決したかったこと:
・サービスの迅速な立ち上げができる言語を求めていた
・日本語の情報が多く、コミュニティも活発な言語を採用したかった
・スケールしていける言語を必要としていた
Ruby採用理由:
・豊富なOSSのエコシステム
・採用においても一定の優位性がある
・表現力が豊かで、読みやすいコードを書ける
Ruby採用効果:
・サービスの急成長にも耐え、スケールできた
・良い開発者体験につながっている
・Railsをベースに速度感のある開発ができた
働くペインを解決、一人ひとりの時間を豊かに
スキマ時間を生かしてすぐに働けるスポットワーク(単発アルバイト)のマッチングサービス「タイミー」。「最短1時間から当日働ける」「今いる場所から近くの仕事を探せる」といった利便性が広く支持され、現在、全国47都道府県でスポットワーク情報を掲載している(図1)。2025年4月時点で約1100万人が利用するスポットワークアプリへと急速な成長を遂げている。読者の中にも「タイミーを利用したことがある」ないし「身近な友人・知人が利用している」という方がおられるのではないだろうか。

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サービスを手掛けるタイミーのビジョンである「一人ひとりの時間を豊かに」は、創業者で代表取締役の小川嶺氏が、尊敬する祖父の急逝をきっかけに得た「人生の時間は有限である」という教訓から生まれた。
また、小川氏は学生時代のアルバイト経験を通して、働くことに関してさまざまな課題を感じていたともいう。例えば、働く場所にいざ着いても、事前に教えられていないことが多いといったオンボーディングの不備や、好きな時間に働けないという制約、給与支払いの遅さなどだ。
これらのさまざまなペインを解決したいという思いから、学生スタートアップとしてスタートした同社。現在でも「一人ひとりの時間が豊かになるようなきっかけを提供したい」という想いのもと、サービス運営を行っている(図2)。

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●Next:急速なサービス成長を支えつづけるRuby on Rails
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