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[調査・レポート]

国内ブロックチェーン市場は急成長するも2021年に300億円弱と小規模─IDC予測

2017年6月16日(金)IT Leaders編集部

2021年に298億円──IDC Japanが国内におけるブロックチェーン関連市場の予測を発表した。4年後でも300億円弱という小ささから考えると、当面は無視しておいていいのではと考えられるが、実はそうではないという。

 IT専門調査会社であるIDC Japanは2017年6月14日、国内におけるブロックチェーン(BC)関連市場の予測を発表した。(1)2017年は10億円にも達しない市場規模は今後5年にわたって年率133%で急成長し、2021年には298億円になる、(2)当面は金融業の投資が多いが、中長期的には非金融業への投資が上回る、(3)トランザクション処理の速度やスケーラピリティ不足などの課題克服のタイミングが成長のキーポイントになる、の3点が発表の骨子。BCは今後、「DLT(Distributed Ledger Technology:分散台帳技術)という呼び方が主流になるという話もあった。

図1 ブロックチェーン市場の予測(出典:IDC Japan)
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 それにしても2021年に300億円弱という規模をどう考えるか。IDC Japanによると、ここにはBCを基盤にしたシステム構築や運用のためのクラウド基盤、ネットワーク、ハードウェア、ソフトウェア、プロフェッショナルサービスなどへの支出が含まれる。にも関わらず300億円という数字は、いかにも小さいのだ。6月8日に同社が発表した国内ビッグデータ/アナリティクス・ソフトウェア市場は、2016年段階で2282億6000万円である。

 数字だけとらえると、金融業など直接関係する業種以外は当面、無視していい市場と捉えることもできる。だが、そうとも言えないようだ。予測の根拠としたことの1つは、BC技術の成熟度が低く、実用的になるまでにまだ時間がかかること。「技術的に成熟してインパクトを及ぼすには5年ではなく、10年くらいかかる。分母が小さいので成長率は高いが、市場規模としてはしばらく小さいままである」(小野陽子 同社シニアマーケットアナリスト)。

 具体的にはトランザクション性能である。「技術開発は活発だが、今でもよくて数100TPS程度でしかない」(同)。BCの土台が分散台帳であり、ネットワークを介した整合性確認に一定の時間を要するという原理的な問題でもあるため、簡単には改善しない。これに新しい技術であることからくるエンジニア不足や実装ノウハウ不足が加わって、市場拡大には時間がかかる。結果、現時点ではBCに関する取り組みはおおむねPoC(概念実証)に留まる(図2)。三菱東京UFJ銀行が役員200人を対象に5月1日から試験運用を開始した「MUFGコイン」はその好例だろう。2017年中に全行員3万人が利用できるようにする予定だが、一般公開は2018年以降の予定である。

図2 国内におけるブロックチェーンの取り組みはPoC段階に留まる(出典:IDC Japan)
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 それでも「BCはデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速する技術だ」と小野氏は語る。「BCとは『改ざんが不可能な、ゼロダウンタイムの堅牢な分散台帳システム』であり、この特徴を生かせる分野への応用は広がっていく」(同)。というのも現時点では利害が相反し、信用が成立していない者(企業)同士が何らかの取引をするには、信頼を担保するために銀行や公証役場のような第3者の介在が不可欠。BCでは代わりに高度な数学や巧妙に作られたアルゴリズムが信頼を保証する。だから取引や情報の共有/交換をローコストかつスピーディに行える。

 取引に必要な行為をプログラムで自動化する「スマートコントラクト」という機能も、BCには実装可能である。こういった特徴や機能を生かした用途開発がすわなちDXであり、トランザクション性能を求められない分野──グループ内などプライベートに近い取引や情報のやりとり──を中心に下図のような用途が見込まれる。例えば複数の企業が挙動研究する場合に情報を共有し、確実な記録を残すといった用途だ。

図3 ブロックチェーンが利用される可能性のある新たな用途(出典:IDC Japan)
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 そう考えると急速にBCが広がるとは言えないものの、金融以外の一般企業でもBCの技術や利用動向に目配りをしておく必要があるだろう。なお、冒頭で示したBCが今後DLTと呼ばれるのは、「ブロックチェーンという言葉はビットコインという特定の応用を想起させる。そのため欧米では、より一般的なDLTが使われるようになっている」のが理由。情報に目配りするために、用語の変遷も押さえておくといいかも知れない。
 

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