NECは2017年10月25日、ベクトル型スーパーコンピュータ「SXシリーズ」の最新機種で、現行機「SX-ACE」の後継となる新型コンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を発表した。2017年2月以降、順次出荷する。ハードウェアは、PCI Express接続型のベクトル演算エンジンを汎用のPCサーバーに装着したものであり、x86向けに開発したコードを専用コンパイラで再コンパイルするだけで動作させることができる。
NECの「SX-Aurora TSUBASA」は、同社製ベクトル型スーパーコンピュータであるSXシリーズの新機種である。
最大の特徴は、ベクトルプロセッサとメモリーを搭載したベクトル演算ユニット「ベクトルエンジン」を、PCI Express接続型の拡張カードの形状とし、汎用のx86サーバーに搭載して動作するようにしたことである。
![写真1:PCI Express接続のベクトルエンジンを手にする、NECで執行役員常務を務める福田公彦氏](/mwimgs/5/a/500/img_5a4aba9ea666bfeba1b5eda785ce659a173150.jpg)
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OSはLinuxが動作する。ユーザーから見れば、Linuxが動作する通常のx86サーバーとして使える。アプリケーションも、x86向けに書かれたコードがそのまま利用できる。付属している専用のコンパイラ(Fortran、C、C++)を使って再コンパイルするだけで、ベクトルエンジン上で動作するアプリケーションが得られる。
![図1●ベクトルプロセッサとx86サーバーを組み合わせた(出所:NEC)](/mwimgs/e/4/500/img_e40cb29aeba45cba2d1284851ba02efa222264.jpg)
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![図2●x86向けコードを再コンパイルしたプログラムを丸ごとベクトルプロセッサ上で実行する(出所:NEC)](/mwimgs/a/b/500/img_ab775978698a94608604137b1a39d7b8209769.jpg)
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コンパイルしたプログラムを、丸ごとベクトルエンジン上で実行する仕組み。このため、ベクトルエンジンを使うためのコーディングは不要である。これに対して、SXシリーズとは異なるスーパーコンピュータの方式の1つであるGPUアクセラレータなどの場合は、処理の一部を拡張カード側にオフロードする仕組みであり、アクセラレータを意識したコーディングが必要になる。
SXシリーズのようなベクトル型スーパーコンピュータの特徴は、メモリー性能が高いことである。SX-Aurora TSUBASAでは、メモリーのバンド幅はプロセッサ当たり1.2TB/秒にもなる。メモリー性能が高いことから、大容量データを一括処理する大規模シミュレーションなどの用途に向く。SXシリーズの代表的な事例に、海洋研究開発機構の地球シミュレータがある。
![図3●メモリー性能を要求する大規模シミュレーションなどのアプリケーションにベクトルプロセッサを使う(出所:NEC)](/mwimgs/7/0/500/img_70937c2c99d22e35ed35d084493183be243530.jpg)
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メモリー性能を要求する分野のアプリケーションにはベクトル型スーパーコンピュータを使い、メモリー性能への要求が低く、純粋に演算コアを増やすだけで分散処理による性能の向上が得られる分野のアプリケーションにはGPUコンピューティングを使う、といった使い分けができる。
●Next:ベクトルエンジンの処理性能、既存機種「SX-ACE」との性能比較
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