[技術解説]

IoTの適応領域を拡大するLPWAのインパクト

低消費電力・低コストのLPWAがIoTによるデジタル変革を牽引

2017年12月15日(金)森 英幸(IT Leaders編集部)

LPWA(Low Power Wide Area)は、その名が示すとおり、低消費電力・広域通信を特徴とする無線通信技術の総称である。2017年は、通信キャリア各社からLPWAサービスが相次いで発表され、今後の急速な普及が期待されている。本稿では、なぜ通信技術であるLPWAが注目を集めているのか、その理由についてあらためて解説したい。

IoTはDX最大の原動力

 LPWAの話題に入る前に、昨今流行りのバズワードであるデジタルトランスフォーメーション(DX)について触れておこう。DXは、簡単に言ってしまえばデジタル技術によってもたらされるビジネスイノベーションのことだが、“どんな”デジタル技術を用いるかは問われていない。要するに、クラウド、ソーシャル、モバイル、IoT、AI(人工知能)、ブロックチェーン等など、用いる技術はなんでもよい。それによって、新しいビジネスやサービスが実現されていれば、それがDXというわけだ。

 とは言え、DXにも典型的なパターンというものはある。例えば、成功事例としてよく引き合いに出されるUberは、モバイルとソーシャルを組み合わせたDXと言えるし、顧客サービスにおけるAI活用(チャットボットによる自動応答)などもDXに向けた旬な動きととらえられるだろう。

 様々なあり方が考えられるDXの中で、現在最も汎用性が高いキーテクノロジーと言えるのがIoTだ。各種センサーから収集したデータを活用して、より高い付加価値を生み出し、従来のモノ売りから脱却するというのは、製造業におけるDXの王道ストーリーである。建機メーカーのコマツや米国GEのジェットエンジン事業などの事例は、このタイプの典型例である。

 IoTの汎用性が高いというのは、まず、適用分野の広さがある。IoTは、製造業だけでなく、物流や卸売・小売、さらには飲食サービスなど、およそモノが絡む分野であれば何らかの応用が考えられる。そして、IoTには漸進的なイノベーションが行いやすいというメリットもある。

 DXというと「破壊的イノベーション=全く新しい新規ビジネス」と捉える向きも多いが、いざ「これまでにない画期的なビジネスを考案せよ」と言われても簡単に思いつくものではない。その点、IoTを活用する場合は、モノにセンサーを取り付けて、データを収集・分析し、新たな知見を得てビジネスやサービスに反映させる、というストーリーを描きやすい。これは日本企業が得意としてきた“カイゼン”の延長線上にあるアプローチと見ることもできる。

 カイゼンは、いわゆる持続的イノベーションに位置付けられる活動だが、まったく手がかりのない状態から破壊的イノベーションを生み出すのは困難だ。カイゼンのプロセスにIoTで得られる新たなデータを組み込むことは、既存のビジネスを土台にしながら、それを新たなビジネスへと発展・転化させることにも繋げられる。このあたりが、DXに取り組む企業にとって、IoTの汎用性が高いと言える所以である。

IoTの適用領域を格段に広げるLPWA

 さて、前置きが長くなったが、LPWAである。センサー・データを収集するには、最低限何らかの通信手段が必要になるわけで、ネットワークが引き込まれている特定の場所に設置されたデバイスであれば有線でよいが、そうでなければ無線ということになる。

 だが、従来の無線通信技術には、通信距離やコスト、消費電力という課題があった。例えば、無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothは通信距離が短い(数十m以内)という問題があり、3Gや4G LTEといった携帯電話網には通信コストの問題がある。そして、いずれの技術にも電源を確保できない場所では使えないという問題があった。

 これらの制限は、そのままセンサーが設置できる場所やデバイスの制限になる。例えば、現在多くの自動販売機は、商品の在庫量を通知するためのテレメトリー機能を備えているが、通信経路としては主に携帯電話網が使われている。これは自動販売機ならば電源の確保に問題なく、また携帯電話網の通信コストに見合う売上が見込めるからこそ、成り立つわけである。つまり、電源の確保が難しい場所、あるいはそれ単体の売上でコストが賄えないデバイスには、センサーの設置が難しかった。

 こうした課題を受けて登場してきたのが、LPWAである。ひと口にLPWAと言ってもその規格はたくさんあり、大別すると既存の携帯電話網を改良したもの(無線免許が必要)と無線免許を必要としない周波数帯を利用するものに分けられるのだが、共通する特徴は電池交換なしに数カ月~年単位での通信を可能にするという点である。

 また、利用帯域を絞ることで通信モジュールを単純化してデバイスコストを下げるとともに、通信速度を抑えることで通信コストの低価格を実現している。例えば、KDDIが2017年11月に発表(サービス開始は2018年1月)した「KDDI IoTコネクト LPWA (LTE-M)」の場合、1回線あたり月額40円から利用することが可能である(「LPWA10」プランで契約回線数が500万超の場合)。

 これらの特徴により、LPWAを使えばこれまでセンサーの設置が難しかった場所やデバイスにもIoTの適応範囲を広げることが可能になる。例えば、農業への応用。これまでもハウス栽培の農作物で生育環境の最適化にIoTを活用する例はよく見られたが、同じことを広大な農地を対象に行おうとすると電源の確保が難しかった。この問題も、LPWAを使えば容易に解決できる。

 適応領域が広がるだけでなく、従来からIoTの活用が進められていた領域でも、LPWAを使えばより低コストでIoT環境を整備できるようになる。あるいは、同じコストで従来よりもセンサーの設置密度を高めて、よりきめ細やかなデータ収集と制御を実現することもできるだろう。

 LPWAは過去数年に渡って様々な事業者が実証実験を行ってきたが、2017年には大手通信キャリア各社から、商用サービスが発表された。将来有望な技術から、いま利用できる技術になったわけだ。

 あらゆるモノにセンサーが組み込まれて、デジタル制御される未来。その未来に向けてIoTデバイスを爆発的に普及させる起爆剤となるのがLPWAというわけである。LPWAの登場により、IoTをキーテクノロジーとするDXが次の段階に進むことは間違いない。

膨大なIoTデバイスをどう管理するか

 LPWAを活用するうえでは、解決すべき課題もある。そのうちの1つが、増え続けるIoTデバイスをどう管理するかという問題だ。2017年にはIoTの利活用も進んだが、同時に適切な管理を受けていない“野良IoTデバイス”の問題も顕在化した。脆弱性を抱えたIoTデバイスがサイバー攻撃に悪用されるという問題だ。LPWAでIoTデバイスの爆発的な増加が予想される中、セキュリティ対策の重要性がこれまでよりも高まることは確実だ。

 脆弱性のないシステムを作ることが事実上不可能である以上、アップデート手段を確保しておくのは当たり前のことである。アップデート作業をユーザーに委ねることもできるが、それが野良IoTデバイスを大量に生み出してきたことを鑑みれば、事業者側から制御できるリモート・アップデートの仕組みが不可欠だ。ただし、その仕組み作りを個々の事業者が行うのは大きな負担である。

 ソフトウェア企業の場合、自社製品に自動アップデート機能を組み込むことはかなり一般的になっている。だが、ノウハウを持たない他業種の企業にとってはハードルが高いことは否めない。実際、製造業の企業が自社製品にIoTを取り入れてサービス化を図るケースでは、ソフトウェアの開発・保守がネックになることが多いという。

 そこで活用を検討したいのが、IoTデバイスを対象としたデバイス管理サービスである。例えば、KDDIの場合は、前述の「KDDI IoTコネクト LPWA (LTE-M)」と同時に「KDDI IoTコネクト デバイス管理 (LTE-M)」というサービスを発表している。このサービスは、IoTデバイスのファームウェア更新や状態監視、省電力機能の設定などを、Web上のサービスポータルから行えるようにするサービスだ。このようなサービスを利用すれば、事業者はIoTで得られたデータをどう活用するか、という本質的な部分により注力できるようになるだろう。

 現在、様々なベンダーからIoTプラットフォームが提供されるようになり、一から十まで自社で用意する必要はなくなってきた。そこでプラットフォームを選定する際には、デバイス管理サービスのような周辺サービスも含めて、自社でやりたいことに注力できるのはどのプラットフォームかという視点で、比較・検討すべきだろう。

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