[ユーザー事例]

「クラウドのセキュリティリスクを回避する」─アステラス製薬がベライゾンのサービスを採用

2018年2月7日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

事業部門におけるクラウド利用は拡大する一方。それを「勝手にどうぞ」とばかり、情報システム部門が放置すればシャドーITが増えるし、セキュリティリスクも高まる。2018年2月6日、「この問題に手を打った」という発表があった。製薬大手のアステラス製薬が、通信サービス大手の米ベライゾン(日本法人はベライゾンジャパン合同会社)が提供するサービス「SCI」を採用したというものだ。一体、どんなサービスなのか?

 アステラス製薬が採用したベライゾンの通信ネットワークの正式名称は、「Secure Cloud Interconnect(SCI)」。企業の社内ネットワークとAWSやAzureなどのクラウドサービスを接続する、グローバルな通信ネットワークだ。ご他聞に漏れず、アステラス製薬でも事業部門や研究開発部門によるクラウドの利用が増えているが、アクセス回線はインターネットだった。SCIを採用することでセキュアに、同時にガバナンスを効かせた上でクラウドサービスを利用できるようにし、医薬品の研究開発をはじめとするビジネスのデジタル化を加速させるのが目的という。

 2005年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して発足したアステラス製薬は、世界70ヵ国で事業展開し、2017年3月期の海外売上比率が7割を超えるグローバル企業。2015年には世界各国の情報システム部門を統合し、1)デジタル化の推進、2)シンプル化の推進、3)グローバル化の推進、の3つを柱に情報システムやサーバー、ネットワークの整備に取り組んでいる。情報システム部長の須田真也氏は、「システムの構築や運用が我々のミッションではない。価値ある情報やサービスを、適材適所で安全安心に利用できるようにすることがミッション」と話す。

 そんな中で浮上した課題がクラウドの活用だった。ベライゾンに協力を依頼して社内の実態を調べたところ 例えば創薬のためのR&Dにおいてビッグデータの分析やシミュレーションに現場サイドでクラウドを活用していた。「情報システム部門が関与しない“シャドーIT”も存在していた。加えてセキュリティは平文のパスワードだけのケースも散見された」(情報システム部ITインフラグループ課長の矢ヶ部泰法氏)。当然、パスワードを詐取されるとアウトである。そこでセキュアにクラウドに接続する手段を検討し、「国内事業者も含め複数の通信事業者を比較した上でSCI(図1)を採用した」(同)。

図1 アステラス製薬が採用したベライゾン「SCI」の特徴
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 採用したSCIはクラウドにアクセスするための専用線ネットワーク。(1)SDN(ソフトウェア定義ネットワーク)やNFV(ネットワークの仮想化技術)を使って構成されているため、論理的な設定を追加するだけでクラウドサービスに接続できる、(2)ネットワーク帯域の利用状況や送受信するパケットを企業が監視できるポータルがある、(3)ネットワーク側でセキュリティ管理、重要データへのアクセス制御を行う、(4)クラウドサービスと同様に料金はデータ転送量に応じた従量制課金であり、固定課金も選べる、といった特徴がある。

 矢ヶ部氏は、これらのSCIの特徴のうち、

  • 新規に拠点を接続する時、SCIは2,3日で開通する。ITがビジネスを邪魔しないというスピードがニーズに合う。
  • 運用段階で、どんなパケットが流れていてどんなアプリが使われているかをモニターできる。
  • アプリケーションの応答遅延があった時、ノード毎の応答を見て問題を把握できる

といった点を特に評価したという。セキュリティ面に加えて、ガバナンスを効かせられるようになることだ。従量制の料金体系についても「システム稼働前のテストなどの際は従量制はとても合理的。何らかの事情で翌月に利用急増が見込まれる時に固定料金に変更できる点も、費用コントロールしやすいので有り難い」という。

 一方、須田氏は、「法規制もあるので情報システムをすべてクラウドに移行できるわけではない。しかしネットワークを整備したことで、中期的には現在のマジョリティであるオンプレミスのシステムがマイナーな存在になるよう逆転させたい。セキュリティを考えた時、5年前ならクラウドには不安があった。しかし現在ではクラウドやネットワークの事業者を正しく選ぶ前提付きで、オンプレミスよりもクラウドの方がセキュアだと考えている」と言い切る。すでに世界各地の拠点からSCIを介してAWS、Azure、それにOffice365に接続している(図2)。

図2 アステラス製薬におけるクラウド利用のイメージ
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