[インタビュー]

「私生活で味わう豊かな“サービス体験”、人事業務を皮切りに社内に拡げよう」─ServiceNow幹部

2018年4月10日(火)川上 潤司(IT Leaders編集部)

社内を見渡せば旧態依然とした業務がまだまだ残っており、ここに来て大手企業を中心に改革に向けての取り組みが急速に進みつつある一つが、身上異動への対応などを含む人事部門の業務だ。この領域に照準を当ててクラウドソリューションを拡充させているServiceNowでHRビジネス担当副社長兼ゼネラルマネージャーを務めるディーパック・バラドワジ(Deepak R. Bharadwaj)氏に話を伺った。

──デジタル変革が声高に叫ばれつつも、社内にはまだまだ前時代的なやり方を続けている業務が散見される。現在、フォーカスしているという人事部門を巡る状況をどのように見ているのか。

 引っ越しで住所が変わった、子供が生まれた、転職することになった…。日常的にあることではないので、いざ会社に申請が必要という段になって、どうすればよいか分からないという人は少なくないことだろう。評価や異動計画などに伴う手続きも同様かもしれない。社内に当該のプロセスやシステムは存在しているはずなのに、やり方が判然としない。やむなく、人事部門に問い合わせの電話やメールをして説明を受け、手間暇かかる一連の手順を踏み、ようやく目的を達することができる。

 要件によっては、担当者をたらい回しにされたり、申請書類の不備を指摘されてやり直しなんてことも茶飯事だ。誰しも「何て面倒くさいんだ」と苦虫を噛むことになる。大事な仕事に時間を割きたいのに雑務に翻弄されるばかりだと、「これでうちの会社は大丈夫なのか?」という疑問すら湧いてくる。

 一昔前なら「そういうもの」と割り切れたかもしれない。しかし、デジタルテクノロジーの進化と普及によって、人々は日常生活の中で優れたサービス体験をそこかしこで味わっている。その分だけ目が肥え、プロセスやシステムがよく練り込まれたものか否かを鋭く見極めるようになった。

米ServiceNowでHRビジネス担当副社長 兼 ゼネラルマネージャーを務めるディーパック・バラドワジ(Deepak R. Bharadwaj)氏

 例えばAmazonで買い物をするシーンを思い浮かべてみよう。所望の製品を検索すると、他にどのような選択肢があるかを含めて役立つ情報が瞬時に得られる。決済するまでの流れは分かりやすいし、配送になるまでのステイタスも可視化されている。現物を見て意にそぐわない場合には、返品方法も丁寧にガイドされている。要は“やりたいこと”を迷い無く進められるのだ。従業員は今まさに、会社でもこうした体験を望むようになったのが大きな変化だ。

 コンシュマライゼーションの進展によって、社内にも洗練されたサービスが強く求められていることを理解した企業は、決してスマートとは言えない業務がどこにどれだけあるかを洗い出した上で、改革に乗り出している。その対象として矛先が向いている筆頭が人事に関わる業務である。

──従業員が日ごろ感じている問題とは別に、人事の業務を担っている側にも悩みが多いのではないか。

 その通りで、人事部自身にも“ペイン”がある。日々の問い合わせへの対応に忙殺されるあまり、より戦略的な仕事に時間を割けないという悩みだ。自分達の業務がスパゲティ状態で“その場凌ぎ”の対応になりがち。効率が悪いし、コストもかかる。可視性も極めて低い。そんな状態が続けばスタッフは疲弊するし、社内からの評判も悪くなる一方だ。抜本から変えなければという思いが急速に募っている。

 今回、来日した目的の一つは、組織・人事マネジメントコンサルティング会社のマーサージャパンと「デジタルHRの最新トレンド」をテーマとするセミナーを開催することで、その会場では日本企業の方々とも積極的に意見交換をした。これからの人事部門のあるべき姿と現状とには、やはり深い溝があるようだ。もっとも、日本だけが特段に遅れているということではない。先進各国の企業は、いずれも似た状況にあるというのが私の印象だ。

 そうした中でも、顧客自身が強く問題を感じるようになっているのは追い風に感じている。数年前であれば、我々が顧客を訪ね、現状の問題点を指摘してはじめて眼を開いてくれるという事も少なからずあった。つまり、従来ながらのやり方に疑問すら感じていなかったわけだ。だが今は違う。前述したように、日常生活の中で洗練されたサービス体験を積むことにインスパイアされ、人事部門も従業員も共にハッピーになるためにはどうすれば良いかを真剣に考え始めたのが昨今の状況である。

 ガートナーが新たに「HRサービスデリバリー」という項目を一つ独立させて「マーケットガイド」というレポートを発表するに至ったのは、この領域に重点的に投資しようという企業が出てきたことの証左だ。ゆくゆくは、ここにソリューションを展開するプレーヤーを対象に、先見性や実力をプロットして評価するマジック・クワドラントも発表されることだろう。

 何に問題を感じて何をしたいのかという顧客からのデマンドが続々と寄せられることに我々もエキサイトしている。ここ数年掛けて顧客と共にマーケットを創ってきたという実感があるし、まだまだフィードバックがあるので、やるべきことは山積している。

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