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富士通、組み合わせ最適化問題を高速に解く「デジタルアニーラクラウドサービス」を発表

2018年5月15日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)

富士通は2018年5月15日、組み合わせ最適化問題を高速に解くクラウドサービス「FUJITSU Quantum-inspired Computing Digital Annealer」(デジタルアニーラクラウドサービス)を発表、同日提供を開始した。日本国内での提供を皮切りに、2018年度中に北米・欧州・アジアにて順次展開する。価格は個別見積もりで、販売目標は2022年度までの5年間で1000億円。

 富士通は、組み合わせ最適化問題を高速に解くクラウドサービス「FUJITSU Quantum-inspired Computing Digital Annealer」(デジタルアニーラクラウドサービス)を発表、同日提供を開始した(写真1)。

写真1:「デジタルアニーラ」専用プロセッサ「Digital Annealing Unit(DAU)」の外観(出典:富士通)写真1:「デジタルアニーラ」専用プロセッサ「Digital Annealing Unit(DAU)」の外観(出典:富士通)
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 デジタルアニーラクラウドサービスは、組み合わせ最適化問題を高速に解くクラウドサービスである。最大の特徴は、富士通が「デジタルアニーラ」と呼ぶ、組み合わせ最適化問題を高速に解くための専用のアーキテクチャを採用していることである。デジタル回路の利点(高い設計自由度やノイズ耐性)と、量子現象に着想を得た高速性を併せ持つという。現行の量子アニーリングマシンでは扱うことができなかったような複雑で大規模な問題も解くことができる、としている。

 開発の背景について富士通は、実社会において、様々な要因の組み合わせを考慮しながら最適解を見つけ出す組み合わせ最適化問題を高速に解くコンピュータが求められていることを挙げる。「組み合わせ最適化問題に対して、従来型のコンピュータでは計算能力に限界があり、一方で現行の量子アニーリングマシンはハードウェア面での制約が大きく、技術的課題がある」(同社)。

 これに対してデジタルアニーラは、コンピュータ内部で素子同士が自由に信号をやりとりできる全結合型の設計を採用し、1024個のビット値を全結合で相互接続した。さらに、ビット間の結合の強さを6万5536階調で細かく表現できる。これにより、現行の量子アニーリングマシンでは扱うことができなかった複雑で大規模な問題も解けるとしている。また、デジタル回路を用いていることから、ノイズの影響を受けにくく、特別な冷却装置を用いること無しに室温で安定動作させられる。

倉庫内のピッキング計画を最適化、最大45%の移動距離を削減

 富士通は今回、デジタルアニーラの開発・実行基盤を提供するクラウドサービス「デジタルアニーラクラウドサービス」と、富士通の専門技術者がユーザーの課題定義や数式モデル構築、数式モデルを利活用するためのアプリケーション開発を支援するSIサービス「デジタルアニーラテクニカルサービス」を提供する。

 事例として、サーバーなどを製造している富士通ITプロダクツは、倉庫内のピッキング計画の最適化に「デジタルアニーラ」を活用し、最大で45%の移動距離を削減したという。また、リクルートコミュニケーションズ、三菱UFJトラスト投資工学研究所、富士フイルム、フィックスターズなど、多くのユーザーとデジタルアニーラの検証を進めている。

 今後は、新たに「デジタルアニーラ」専用プロセッサ「Digital Annealing Unit(DAU)」を開発し、ビット間全結合の規模を現在の1024ビットから8192ビットへ、結合精度を16ビットから最大64ビットの1845京階調まで拡張する。これにより、さらに大規模な問題への適用を目指す。交通渋滞や災害時の復旧計画といった複雑な社会課題も計算できるようになるという。

 専用プロセッサ「DAU」を実装したクラウドサービスは、2018年度中に提供する予定である。クラウドサービス以外の選択肢として、ユーザー企業のデータセンターに設置できるオンプレミス製品の販売も予定している。さらに、100万ビット規模への拡大や、専門技術者の増員なども視野に入れている。

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