マイクロサービス、RPA、デジタルツイン、AMP..。数え切れないほどの新しい思想やアーキテクチャー、技術等々に関するIT用語が、生まれては消え、またときに息を吹き返しています。メディア露出が増えれば何となくわかっているような気になって、でも実はモヤッとしていて、美味しそうな圏外なようなキーワードたちの数々を、「それってウチに影響あるんだっけ?」という視点で、分解していきたいと思います。今回はデジタル・ガバメントを取り上げます。
【用語】デジタル・ガバメント
「サービス、プラットフォーム、ガバナンスといった電子政府に関する全てのレイヤーがデジタル社会に対応した形に変革された状態」――1年前2017年5月30日に高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT本部)・官民データ活用推進戦略会議が決定した「デジタル・ガバメント推進方針」におけるデジタル・ガバメントの定義です。
eガバメント閣僚会議は同方針をふまえ2018年1月16日に「デジタル・ガバメント実行計画(DG実行計画)」を決定し、各府省へ4月中をめどにデジタル・ガバメント実現へ向けた中長期計画策定を求めました。各府省の計画はIT本部事務局である内閣官房情報通信技術総合戦略室(IT室)との調整を経て政府CIOがレビューし、6月には政府新IT戦略が決定する見込みです。
DG実行計画は2017年5月30日に公表された「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(官民データ計画)」の重点8分野のうち、「電子行政」推進に関わる施策等を具体化したもので、デジタル技術の徹底活用と官民協働を軸に行政サービスのデジタル・トランスフォーメーション(行政サービス改革)を目指します。99ページの官民データ計画で3回だった「行政サービス」のキーワードが67ページ中59回登場し、政府横断のサービス改革「サービス設計12箇条」を掲げ、サービスデザイン思考に基づく改革を明記しました。
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「行政サービス」へ
デジタル・ガバメントへのシフトは、世界共通の潮流。2011年オーストラリアNational Digital Economy Strategy、2012年米国Digital Government Strategyをはじめ、各国が”Digital”を冠したIT戦略を制定したり、英国Government Digital Service(2011年~)やシンガポールGovernment Technology Agency(2016年~)などの政府横断組織を設けたりしています。
OECDは2014年にRecommendation of the Council for Digital Government Strategiesを公表。市民が政府と自分自身のデータにリアルタイムでアクセスできる環境構築により、市民ニーズを汲みとるアプローチ(Citizen-Centric)から、市民や企業が自らニーズを政府とともに(in partnership)とりまとめて明確化する市民や企業が自らのニーズを判断し表現するアプローチ(Citizen-Driven)への転換を推奨しています。
21世紀初頭に一世を風靡した「eビジネス」は、スマートフォンやIoT、AIといった技術の現実化でデジタル・トランスフォーメーションを迫られています。1995年頃から「電子行政」「eガバメント」を掲げ既存サービスの電子化を進めてきた政府も同様に、従来の省庁別システムやサービスは、いまやデジタル化が急加速するビジネス環境のボトルネックになりかねないことに気づき始めたのでしょう。
デジタル・トランスフォーメーションを具現化した各種サービスに慣れた人びとのアナログな行政に対する満足度を取り戻し、できれば主体として参加してもらおうと、デジタル・ガバメントは既存業務プロセスを前提とせずサービスの全行程をデジタル化し、サービスの結果として国民や企業との関係強化や経済活性化といったアウトカムを目指そうとします。
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